« 第287話(修理環境について) | | 第289話(万年時計について) »
« 第287話(修理環境について) | | 第289話(万年時計について) »
2007年01月22日

●第288話(IWCインヂュニアの復活)

IWCファンの方にとっては、待ちに待ったと言える、あの腕時計歴史に残る『インヂュニア』が最近、復活しました。それも、インターナショナル時代からの、独自の発想のベラトン自動巻機構を採用した、自社開発のムーブメントCal.80110を搭載しての再登場でした。

インヂュニアと言えば、時計ファンなら誰もが知っている超耐磁性機能を持った優れた腕時計です。軟鉄素材のインナーケースで、ムーブメントが保護されている為に、磁気の影響を受けやすい発電所等の職場の技術者やX線は扱う医師の方に、根強い人気があった時計です。

インヂュニアは、弊店の修理履歴にも紹介していますが、1954年に初登場をしました。ムーブメントCalは、852、8521、853、8531 へと発展していき、微細精度調整が出来るブレゲヒゲの高精度腕時計でした。当然このムーブメントは、インターナショナルが開発した自社生産ムーブメントでした。

1993年以降の、インヂュニアのムーブメントCal.887、887/2(36石)はジャガールクルト社からムーブメントの供給を受け、ケースの厚さも出来うる限り薄く仕上げているデザインが秀逸な綺麗な腕時計でした。このジャガールクルトのムーブメントは、非常に繊細な薄型の自動巻の為に、オーバーホールする時に、極めて緊張感が漂う修理作業になります。その頃のマーク12も、同じくジャガールクルトのムーブメントを採用していました。(アンティーク市場でも耐磁性能力に優れたロレックス・ミルガウスと共、IWCインヂュニアはにとても人気のある時計と言えます。)

ここ10年、IWC社は、マーク15のムーブメントのようにETA社のムーブメントを多く採用していましたが、この理由はリペアリングがJLの機械よりも容易であったためと推測しております。最近売り出した、『ポルトギーゼ』に搭載されたCal.5000、『ビッグパイロットウォッチ』に搭載されたCal.5011は、マニュファクチュール化してIWC自社開発のムーブメントを搭載している事は、嬉しい限りと言えます。惜しいかな、この新発売のIWC・インヂュニアオートマチックの予定価格が\777,000もする事です。もう少し、価格を抑えて、日本で発売していただけたらどんなに嬉しいか、わかりません。