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2007年01月22日

●第283話(ロレックスの秘密主義)

ロレックスの創業者、ハンス・ウィスドルフ(1881~1960)氏が会社を立ち上げてから、今年が創業100年になる記念的な年です。(幼くして両親を失った苦労人ハンス・ウィスドルフは時計職人ではなく時計商人として成功した人物です。当時、すぐれたムーブメントメーカー、エグラー社と取引を開始した事がその後の大きな飛躍に繋がりました。)

情報非公開の秘密主義のロレックス社が、今年どんな100周年記念モデルを出すのか?全く、見当がつきません。何かしらのリバイバル・モデルを復活させるのではないか、と期待し憶測しています。スイスの数ある、時計メーカーでは、どちらかと言えば後発時計会社と言えなくも無いと思いますが、僅か 100年で名実共に、世界のトップに君臨したのは創業者ハンス・ウィスドルフ氏の経営哲学が、脈々と受け継がれていったからに違いありません。

ロレックス社が、工場等の生産ラインを全くマスコミ等に見学させない原因は、いろんな事が考えられますが、一番大きな理由は、あくまで推測ですがメカ式で、クロノメーター合格品を100万個前後、毎年造り続ける生産能力でしょうか?

恐らく、一日当たり、4000個に近い数のクロノメーターを生産する事は、驚異的な事と言わざるを得ません。よって、他社時計メーカーに高精度機械式腕時計を多数製造出来る、効率の良い生産現場を見せる訳にはいかないものと思います。(それ以前にムーブメントの造りが組み立てやすく高精度が出るように設計されているのも大きな要点ではあります。)

世界中の時計ファンなら、スポーツ・ウォッチなら誰もが、まず脳裏に浮かぶのは、ロレックスのブランドだと思います。それ程までに、世界中の人々にロレックスは、頑丈で正確で耐久性の良い時計として知られています。

最近、ロレックス社が秘密主義である事を顕著に示している事に出会いました。ROLEX 婦人用デイトジャスト・Ref.79173 Cal.2235 31石のムーブメントは、紳士用Cal.3135を小型化・薄型化した現時点での、最高レベルのレディスの自動巻ムーブメントだと思います。

それまでの、レディス用のムーブメントはCal.2030 28石、Cal.2135 29石の平ヒゲゼンマイ採用のムーブメントでしたが、四年前後前から、巻き上げヒゲ採用のCal.2235を新規に採用しています。当然、組立調整作業は、難しくなるはずなのに、あえて精度を追求せんが為に、女性用に巻き上げヒゲのテンプを搭載した事は、画期的な事ではないか、と思います。

普通の時計メーカーならこの事を大々的に宣伝して、販売するのが普通だと思われるのですが、ロレックス社はこの事を、今までほとんど、おおっぴらにしないで来た事は、ロレックス社の会社の姿勢を如実に表していると思います。消費者・ユーザーに迎合する事無く、あくまで情報を公開しないで、完璧な自信のある商品をその都度その都度、送り届けるロレックス社の精神は見事であるとしか、言いようがありません。

最近、和歌山県のO様から修理依頼を受けた、セイコー婦人用自動巻腕時計Cal.2205A 17石(1975年第二精工舎製、精度等級LD、日差-35~+55、28,800振動のハイ・ビート)は、30年前に製造されたものですが、当時は、新入学の高校生相手に造られたジョイフル女性用腕時計でした。

今から思えば、高校生には、勿体ないムーブメントが搭載されていました。この時計を、オーバーホールしてヒゲゼンマイを調整しましたら、クロノメーター級の精度が出て、当時の第二精工舎の技術レベルの高さに改めて、驚いた次第です。このようなムーブメントを現在、製造したらゆうに15万円以上はかかる物かも知れません。