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2007年01月21日

●第256話(長野県発・時計修理資格について)

この時計の小話でも、何度も取りあげた事なのですが、 機械式腕時計のめざましい隆盛と共に、必ずや4、5年後にやってくる オーバーホールをする時計職人の絶対数の受け皿が非常に少ないという事を、 危惧してきました。

恐らく、現実味をもって感じられるであろう、修理対応が目一杯で出来ない状態がどの時計店にも訪れてくる事に対して、業界が先手を打って、対応策を一日も早く打たなければ、とんでもない事に陥る事は容易に察せられます。小生も事ある毎に舶来時計輸入商社の役員に方々に、充実したサービス網を しっかり構築して欲しいと口を酸っぱくして言ってきました。

最近、非常に喜ばしいニュースが飛び込んできました。 1970年代からのクォーツ腕時計の拡販と共に、難関のCMW試験も終幕し、国家技能検定の時計修理課題もクォーツ一辺倒になり、機械式腕時計の修理技術を問う試験制度が無くなっていましたが、長野県が『技能評価認定制度』を創設し、機械式時計修理技能資格が、認定第一号になった事は喜ばしい出来事です。

機械式腕時計の技術の継承を計る為に、長野県と、長野県時宝鏡商業協同組合、 セイコーエプソン、シチズンの子会社『平和時計製作所』が、協力しあって、 機械式腕時計の修理技能資格を独自に立ち上げ、 今年度10月末に初の認定試験を行うと、宣言したのです。

試験制度は1級から、3級まで等級があり、 1級は時計職人としての、卓越した知識や、技能を試され 2級は生業として可能な、修理技術力の保有を試され、そして 3級は分解掃除と、外装の組立が再生出来る力が試されます。(弊店の時計修理通信講座を良い成績で卒業した二人のK君にも 受験を勧めています。)

日本で、販売されるスイス製高級腕時計が3.000億円も売れ、そのほとんどが機械式腕時計で占められる事を考慮すればもっと早く、国家技能検定の試験課題もクォーツ腕時計の修理から脱却して、機械式腕時計の修理技術を問う試験に、しなければならなかったのではないか?と思っております。(機械式腕時計の修理はクォーツの修理よりもかなり難しくて専門的な理論と技能を身に付けなければならない事を思うにつれ、もっと早い段階で何かしら方法で 職人教育を充実させるべきではなかったのかと思います。)

クォーツのオーバーホールは難なく出来るけれども、機械式腕時計の修理技術を完璧に修得している若手の時計職人は、意外と少ないのではないか?と想像しております。そういう点でも意気込みのある、若手の時計職人の人が機械式腕時計の修理技術の腕前を上げて、この長野県主催の時計修理資格を、取得する為に頑張って頂きたいと 願っております。小生も微力ながら将来、CMW試験が復活するべく尽力したいと思っています。