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2007年01月21日

●第254話(パーツの入手について)

先日、修理をしていてこのような事が、ありました。 K様から修理依頼を受けた、ロレックス (Ref.6426 Cal.1225 17石 手巻き)は ゼンマイが切れておりオーバーホールとゼンマイ入れ替えで、修理作業を終えました。

ゼンマイ切れの故障の場合、必ず点検しなければならない事があります。 一瞬にして、爆発的な力でゼンマイが切れた場合、香箱の歯に想像を絶する力が 加わる為に、歯こぼれが起きる場合が往々にしてあるのです。

その時も二重キズミで、香箱の歯を一つづつ、入念にチェックして、異常ないものと、判断して、組み立ててオーバーホールを完了しました。一週間の携帯精度調整を無事に終了し、その後お客様にその時計をお渡ししました。そうしました所、K様から、『10日程は、正確に動いていたのですが、今日、急に止まった。』との連絡がありました。

再度、送って頂くように、お願いし、再点検する事になりました。ムーブメントをケースから取り出して、全てのパーツをを一個づつ取り出して点検しました所、なんと、香箱の歯が三枚欠け落ちているではありませんか!これでは、動かないのも当然で、新品の香箱を入手する為に、アッチコッチの取引先に手配を頼みました。
(おそらく二重キズミでは、発見出来ない非常に小さな亀裂が歯の内部で 起きていた為でしょう。 2週間は何とか持ちこたえたのですが、やはり亀裂が入ったところが負荷が大きく 歯が欠けてしまったと思います。)

このロレックスは、シリアルナンバー3705510から判断して、1973年製と思われ、入手が出来ない可能性もあるのではないか?と少し不安に陥りました。弊店の取引先のスイス時計パーツ専門・輸入商社や、普段から取引をさせていただいてる、二社の時計材料店、そして知人のCMW技師等に入手出来ないものか、と尋ねました。

ようやく、見つけられ、交換し、この修理作業は終了しました。ロレックスの場合は、99%新品の純正パーツは入手出来るのですが、最近では、入手出来ないパーツの時計メーカーがあり、そうゆう時計メーカーの修理依頼が来た場合、旋盤等で、作れる場合はいいのですが、作れないパーツ破損の場合は、修理依頼をお断りしている状況です。

昔は、時計材料店に、力があったので、スイス時計メーカーのほとんどの あらゆるパーツは入手できたのですが、この頃では、ジャガールクルト等に 代表されるマニュファクチュールのパーツはもう、完全に入手出来ない状態に なっています。

ここ最近、45キャリバーを搭載した、GS・KSの修理依頼がたくさん弊店に持ち込まれますが、この時計の特徴も、一般の手巻きの時計よりも歯車数が多い為、またハイ・ビート仕様にしている為に、ゼンマイ・トルクの大きな香箱を使用している為に、ゼンマイが切れて香箱の歯こぼれや、2番車のカナの摩耗・損耗が著しいものが見受けられます。

また、三番車の歯もかなりへたっているものも、多く見受けられます。 これらのパーツはもはや入手不可能で、修理完了後のお客様もこのような貴重な GS・KSは大事に使って頂きたい、と思わざるを得ません。