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2007年01月21日

●第252話(掃除木)

最近、他店でオーバーホールしたにもかかわらず、調子が悪いので、見て欲しい、 という修理依頼が、時折あります。 裏ブタを開けますと、大体がそうなのですが、前回時計修理人が書いたと思われる 日付が入っています。

その日付を見ますと、半年前とか、一年前に修理されたにもかかわらず、テンプ上下穴石の油がほとんど無い状態なのです。当然、アンクルの油もチェックしてみますが、ほとんど油の残量がありません。何故半年・一年前にオーバーホールしたにも関わらず、油が消えてしまうか?と言うと揮発油(ベンジン)の油膜が残っている状態で、注油しているからなのです。

穴石・受石等を洗浄した後、布巾で素速く拭いて揮発油・油膜を取り除けばいいのですが、綺麗に油膜が取り除けていない状態で、テンプ油を注油した場合、油は拡散してしまい、長時間、保油出来ないのです。弊店では、超音波洗浄機で、洗浄した後、テンプの上下ホゾ、ガンギ車上下ホゾを掃除木(エルダーピース)でホゾに万が一油膜が残っている場合を考えて、取り除く方法を採っています。

超音波洗浄機は、時計修理人には、無くてはならない必須の機械なのですが、 100%全幅の信頼を置くわけにはいかず、 テンプの穴石・受石・アンクル爪石,各車の穴石等を洗浄後も、 油膜が残らず綺麗になっているか?確認作業をしなければなりません。

特に、アンクル爪石・油が短期間の内に、拡散して、無くなった場合、時計の調子は急激に悪くなるからです。(ハイ・ビートなら余計に悪い影響がでます) ロレックスによく見受けられるのですが、新品購入後、7年以上時間が経過しているにもかかわらず、テンプの穴石・油が、十分に残っているケースがあります。

さすがに、ロレックスのテンプのホゾの保油能力の凄さに愕然とします。ロレックスは、2番・3番・4番・ガンギ車のホゾの穴石・油の量が十分に注油出来る為に、オーバーホール後5年以上過ぎても、油が残っている場合があり、ロレックスは他を抜きんでて、良い保油設計をしているものと、いつも感心しております。