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2007年01月21日

●第249話(サービスセンターについて)

この間、少しばかり、驚いた事がありました。 弊店にて、舶来腕時計をお売りした人から、一週間ぐらいしてメールがあり、 日差が一分前後遅れるので、精度調整して欲しい、との連絡がありました。 (おそらく何かしらの衝撃による原因と思われます。)

どこの時計店、百貨店時計売場でも、そうなのですが、販売後の保証期間中に 不具合が発生した時は、輸入元(仕入先)が責任持って対応して、 修理調整する事になっています。
(自前で修理技術を習得していないほとんどの時計店は、 保証期間を過ぎても輸入元に送って修理依頼するのが、一般的です。 弊店では保証期間が切れた場合のお客様の大切な時計の修理に関しては 小生が修理するようにしています。)

そのお客様に、メールで返事を出して、輸入元のサービスセンターに送っていただく様に、お願いしました。しばらくたって、そのお客様から、連絡が入り、サービスセンターから直って送られてきた時計を見て、ビックリした、との事でした。何故なら、ベゼルと裏蓋にかなりのコスリ傷が一杯付いているとの事でした。 余りにも酷いので、弊店に送りますので、一度見て頂きたい、との事でした。

荷物が届いて、腕時計を観てみましたら、10年以上使用した程のキズがベゼルと裏ブタに一杯ついていました。時間調整のみの、修理なので、ここまでキズがつくのは想像だに出来ず、その時計の輸入元サービスセンターに電話をしました。その時計のサービスセンターには、わずかの人しか修理技術者がおらず、そこの責任者のN氏と電話で何故こういう修理ミスになったのか?問いただしました。

その時計は、限定版シリアルナンバーがついている貴重な時計なので、完璧に修復してお客様宛に送って欲しい、と頼みました。輸入元の話では、これだけキズがついてしまったものですから、海外の製造元に頼んで、もう一本追加して製造する、という事に話が一件落着しました。後日、その輸入元の取締役、M氏がお詫びがてら弊店に来店されました。

2時間余り、人柄の良い信用出来るM氏と対談して、 今後の輸入元サービスセンターの修理の対応の仕方、時計技術職人の養成の方法等を、キメ細かく提言しました。

日本には、舶来腕時計を輸入して、時計小売り店に卸す輸入商社が、おそらく50社以上に上るものと思います。その中で、自前のしっかりしたサービスセンターを持っており、どんな修理でも対応出来る技術者を育成して、十分なアフターフォローが出来る輸入時計商社は果たして、どのくらいの数なのか?想像するにつれ、ほんの僅かの会社しか無いのではないか?と危惧をしております。

日本で安心して、舶来腕時計を購入出来る、自前のサービスセンターを持っている時計会社は日本ロレックス・スウォッチグループジャパン・日本シーベルヘグナー・ワールド通商・・・等の会社でしょうか。その中でもダントツに、充実したサービスセンターを保有している会社は日本ロレックス社、一社のみと小生は思っております。

日本ロレックス社は、総社員数が200名前後と、聞き及んでいますが、その中で修理技術者の数は140名もの数を占めるそうです。サービスセンター網も、日本各地に点在しており、東京、大阪、名古屋、札幌、福岡、仙台、広島の7都市にあります。世界や日本のユーザーのみなさんが、ロレックスを愛されるのも、ムーブメントの秀逸さ、ケースの堅牢さもさることながら、アフターサービス網がしっかりしている為に、後々が安心である、と思われているからに違いありません。

このようなサービス網を持った、日本ロレックス社は、マレで、日本にある舶来時計の輸入元会社はほとんどが自前のサービスセンターを持たず、外注の民間の下請けサービスセンターに修理を委託・依頼しているのが、現実だとおもいます。クォーツ腕時計なら、新品ムーブメントを一式交換をして修理完了するのが輸入元の修理の一般的な方法ですが、機械式腕時計の場合は、修理技術者が一個一個丹念に分解・組立・調整をして修理しなければなりません。

輸入元時計会社の経営者の方には、商品を販売拡張する以前に、もっと自覚を持って先ず第一にしなければならない事は、修理体制を自前で完全なサービス体制網をまず作って頂きたいと、強く願望するものです。そうしなければ折角、機械式腕時計の魅力に魅了された大切なユーザーを 失うことになると思うのですが?

執筆後記  先頃4月24日に、アンティコルムのオークションがジュネーブで行われ、パテック フィリップの懐中時計(Cal.89 K18WG)が史上2番目の高価格で、落札されたそうです。その金額はなんと500万$強(日本円で約6億円)で、あったそうです。ちなみに、時計の落札最高価格は同じ、パテック フィリップで、1933年に完成された複雑懐中時計で1999年に1100万$強(日本円で約13億円)で落札されたそうです。