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2007年01月21日

●第242話(メーカー修理対応について)

1970年当初、水晶腕時計が発売された頃には、 水晶腕時計のオーバーホールの修理対応は、難解な設計・組立作業の為に 一般小売り時計店では出来ないだろうとメーカー側が判断し、 メーカー修理一本のみに、なっておりました。

しばらくの間は、各メーカーのサービスセンターのみで、オーバーホールの対応が全て賄われていたのですが、クォーツ腕時計が、手の届く低価格帯(当時の商品代金で2~3万円)になってきますと、定期的なOHやその他のなんらかの原因による故障への、修理・対応がメーカーのサービスセンターのみではとても対応出来なくなり、

メーカー主催の『クォーツ腕時計技術講習会』がセイコーでは全国の主要都市各地で延べ三日間の内容で何回か行われ,またシチズンでは神奈川県の藤沢市のシチズン技術研究所で五日間、行われる様になりました。(小生は、シチズンクォーツの講習会は昭和50年2月3日~7日にかけて受講し講師はかの有名なシチズン製造部設計課の岩沢 央氏ら4人の諸先生でした。 セイコークォーツの講習会は昭和55年2月20日~22日にかけて大阪市で受講しました。)

その講習会に参加して技術講習を修了した人のみ、『クォーツ技術講習済認定店制度』が取られ、その修了証書を、持っている技術者のいる店には、水晶腕時計のパーツ・工具が支給されオーバーホール及び修理が出来るようになりました。30年前の時計小売店は、今とは全く違って、技術レベルの非常に高い時計店主が全国で数多くおられ、その認定店制度は、大いに力を発揮しメーカー側も助かったものでした。

最近、千葉県の方から最高級GS(9S51-0020)のOHの依頼を受けました。メール・マガジン読者のお方で、どうしても小生に愛用のGSをOHして頂きたいとのメールがありました。腕時計を受け取ってみて、ムーブメントを見てみましたら、ローター(自動巻錘)を取り外すのに、GS専用工具が必要な事が、解りました。

現行のGSの修理はグランドセイコー・サービスステーション(略称GSSS)が一手に引き受けていることが、わかっていましたので、東京のGSSSに電話して、責任者のK所長に代わってもらい、GS専用工具を弊店にわけて頂く事は出来ないか?と頼みました。K所長は『自分一人の判断では答えが見いだせないので、一週間待って頂きたい』 との事でした。

一週間後、GSSSのK所長から電話がかかり、『GSSSのK代表、東日本営業部名古屋営業所長・O氏と相談の結果、工具をお譲りする事は出来ないという結論になりました。』との連絡を受けました。今まで、GSSSが修理を断ってきた、過去の名機のGSの修理を何十回となく直してきた小生としては、その答えに、はいそうですかと、引き下がる訳にもいかず、 『弊店のHPの修理実績等をよく見てから再度、考慮して、返答していただきたいです』と申し込み致しました。

しばらくしてから、K所長から、電話がかかり 『SC推進部主幹・A部長、 東日本統括部長・H氏と三者会談の結果、 GS専用工具は残念ながら今回はお渡し出来ないという、最終結論になりました。』 という返事を頂きました。

現行のGSの販売個数が少ない時には、GSSSで全てが賄えるものと思いますが、今後、販売数量が増えて、OHの依頼が急激に伸びた場合、GSSSだけでは、とても全て賄いきれないのは、目に見えて解っている事だと私は思っております。その時になって、あわててクォーツの時の様に、全国各地にGS技術講習会を開いて、認定店制度を設けるのか、どうなるのか、しばらく様子を見守りたいと 思っております。

GSSSのK所長の言い分にも解らない訳ではありません。小生にGS専用工具を用立てした場合、他の時計店からも、GSの専用工具を譲って欲しい、というケースも考えられ、その場合その時計店がある一定レベルの技術者がいる店の場合、問題が無いのですが、未熟な技術の店からの、工具の斡旋依頼を断る事が、出来ない、との話でした。 (GSSSにはある一定の基準をクリアした技術者が修理対応するので安心な面はあると思いますが。)

小生もGS・KSを今まで数え切れない程、OH修理をしてきて、初心者の人が、このセイコーの最高峰の機械をいじったりしたのでしょうか?、ヒゲゼンマイを大きく変形させて壊しているのに沢山あたって、大変苦労した経験が余りにも多いので、K所長の言い分にも、一理があると思った次第です。(GSSS側も言っていましたが酷い修理作業をしたGSを何回も見ているとのことでした。)弊店では、将来の現行GSのOH依頼の為に、なんとかこのローター外しの工具を 自作して、間に合わせたいと思っています。