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2007年01月21日

●第241話(44GSのOH)

先月末に岐阜県のKさんから、修理依頼を受けた『グランドセイコー手巻き腕時計(Cal.4420 27石 1968年第二精工舎製)』は当時の木製化粧箱と、グランドセイコー基準合格証明書が添付されて、送られてきました。この44GSは1964年に、亀戸工場で開発された、二代目のGS手巻き腕時計で、ムーブメントのベースは同じ亀戸工場で生産された『クロノス』でした。

Kさんは、高校進学のされる時に、父親から新品のこのGSを贈られたそうで、余程嬉しかったのでしょう、今日まで、大事に保管されていたために、ケース・証明書が残っていたものと推察しております。(高校生時代からGSを所有するなんて羨ましい限りでビックリしてしまいます。)

GSファンの方には、貴重な資料なので、証明書の 記載内容をお教えしたいと思います。

(証明書P1)
最高級腕時計グランドセイコーグランドセイコーは、セイコーが技術の粋を結集し完全なる品質管理のもとに製造した最高級腕時計です。 この時計の高い品質を永く保存するために極めて厳しい検定基準を特に設定し、これに合格したもののみグランドセイコーの名称を与え、皆様のお手もとにお届けしております。

(証明書P2)
グランドセイコー検定基準は、世界的な高精度の基準等を参考とし、さらに時計を実際に携帯した時の 実用精度に重点をおいて設定されており、この基準に基づいた時計の製品化は最高度の加工・調整技術と 厳格な品質管理の裏付けによってはじめて可能となるものです。

(証明書P3)
<グランドセイコー検定基準> a 5姿勢の平均日差 -3.0~+6.0 sec b 5姿勢の平均日較差 2.2 sec c 最大日較差 6.0 sec d 水平垂直の差 +-8.0 sec e 最大姿勢偏差 10.0 sec f  第一温度係数 +-0.6 sec g  第二温度係数 +-0.6 sec h 復元差 +-5.0 sec

(証明書P4)
<グランドセイコー試験> グランドセイコー検定基準のそれぞれの項目についてどの様な試験がおこなわれているかを説明いたします。(1)時計の姿勢及び検査室の温度を変えて15日間、毎日、日差を写真測定します。イ.最初の10日間は24℃で同じ姿勢を2日ずつ5姿勢でおこないます。 (5姿勢とは時計を6時位置上、3時位置上、9時位置上、文字盤上、文字盤下にした5種類の状態をさします。)

(証明書P5)
ロ.次の3日間は、文字盤上の状態で4℃、24℃と36℃と3通り温度を変えて、それぞれ1日ずつ測定します。ハ.最後の2日間は試験の最初の2日間と同じ姿勢(6時位置上)で、室温も24℃で測定します。(2)上記の測定で得た測定値からそれぞれの項目について成績を計算します。 イ.平均日差

(証明書P6)
最初の10日間の日差の平均値です。 ロ.平均日較差日差は同じ姿勢でも試験した日によって多少変動することがあります。そこで、ある日測定した日差と翌日同一姿勢で測定した日差の差を日較差といい、平均日較差は最初の10日間における5姿勢の日較差を平均したものです。ハ.最大日較差 日較差の最大値です。

(証明書P7)
ニ.水平垂直の差 5姿勢のうち、文字板上(水平)と6時位置上(垂直)の姿勢における各々の2日間の日差の差です。ホ.最大姿勢偏差5姿勢の各日差と平均日差との差のうちで最も大きい値をいいます。 ヘ.第一温度係数4℃と36℃の日差から1℃当りの日差の変化量を計算します。ト.第二温度係数24℃と36℃の日差から1℃当りの日差の変化量を計算します。(時計携帯時に条件をあわせて温度誤差をさらに厳しく管理するために新らたに取りあげた項目です。) チ.復元差試験最終日の日差と最初の同じ姿勢の2日間の日差の平均値との差をいいます。

(証明書P8)
<取扱説明書> ■セコンドセッティング(秒針規制装置)この時計には、便利な秒針規制装置がついてます。リュウズを引き出すことにより針が止まり、時報に合わせて押し込めば、秒針まで正確な時刻に合わせることが できます。これによって精度の高いこの時計の価値が一層高められています。 ■この時計にはセイコ-独特の3D装置がついています*ダイヤショック(DIASHOCK) おとしてもこわれない耐震装置*ダイヤフレックス(DIAFLEX) きれない、さびないゼンマイ*ダイヤフィックス(DIAFIX)   いつまでも性能を保つ保油装置

(証明書P9)
■防水性を保つために・・・ この時計は、工場出荷の際に各種の厳しい防水性能検査がおこなわれ、これに合格したものです。この優れた防水性能をながく保持するために、以下の点にご留意ください。*水中ではもちろん水滴のついたままリュウズを回すことはさけてください。*水につけた場合は、ご使用後水滴をよく拭きとってください。特に海水につけた場合は清水で塩分を洗い落とすことが必要です。 ※防水性を長期間保持するために、1~2年目毎にガラス、リュウズ、パッキングなど防水時計専用部品の交換をおすすめします。部品交換の際には”SEIKOの純正部品”とご指定ください。 と記載されていました。

同じ頃、石川県のTさんからGSハイ・ビート(10振動)自動巻『Cal,6145A 25石 1969年諏訪精工舎製 社内精度等級2A 日差- 3~+6』 のOHを依頼されました。両方のGS共、過去において何回か他の方が修理している為、ヒゲゼンマイが 大きく変形しておりました。

理論に乗っ取ってほぼ完璧に修復した結果、 両方のGS共、30数年前の新品当時の精度が復活しました。 ※このGSのヒゲゼンマイの修正に根をつめて長い時間作業にあたった為に神経が疲労困憊し体調を崩してしまいました。ここ10日間仕事をやむえず休憩してしまいました。OH・修理お預かりしている皆様に修理完了が少し遅れることをお詫びいたします。