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2007年01月21日

●第237話(アンティーク・ジラールペルゴの修理について)

先日、例年よりも大雪の為、道路に残雪が残るなか、身なりの良い恰幅のある紳士が弊店にこられました。小生も滋賀県出身なので、お話をしていたら、関西なまりの言葉だったので『大阪の方ですか?』と問いましたら、『K市から来ました』と、おっしゃられました。ご来店の意向を聞きました所、『親戚の方の遺品を形見分けとして頂いたので今日持参した6個のアンティーク腕時計の修理をしてほしい。』との事でした。石川県は温泉地や観光の名所も沢山ある為そのお帰りの途中ですか?と問いました所、『イソザキ時計宝石店に修理を持ってくるだけの目的で、来たのです』と 言われまして、大変恐縮してしまった次第です。

4年前に弊店のホームページを立ち上げてから、本当に遠方と言える所から、大切にしておられる腕時計を持って弊店に訪ねてこられる人が多くなり、大変うれしく思う反面、修理依頼が増えて、少し疲労が蓄積している 今日この頃ではあります。

K市のH氏が持参された、修理依頼品の中に、目を見張る時計が2~3点あり、 ここで紹介したいと思います。

・ジラールペルゴー男性用手巻き角形腕時計・文字板紺色・SSケース ケースNo.9386GA 709 17石  Cal.091-374 この時計は手巻きで、おそらく35年以上の前のものでしたが、ムーブメントの造りもしっかりしていてOH後、溌剌とした青年に生き返った様に、調子が良く見事に蘇生しました。とても大切に使われてきたのでしょうか、外見も綺麗で機械もまた美しく見ているだけで惚れ惚れする手巻きムーブメントです。

・ジラールペルゴーGYROMATIC腕時計SSケース39石 ケースNo.3109930   39石 78241891は外観はかなり草臥れていましたがこの時計の機械も、かつてのGPの実力を十二分に発揮していて、設計に寸分の狂いもない完璧な薄型の自動巻でした。こういう時計のオーバーホールをして、完全に停止していた腕時計が再度、命を与えられテンプが動きだし、正確に時を刻み出すのを見るにつけ、時計修復師として、この職業になった事を大げさな言い方ですが、有り難いなと思う瞬間です。 ※上記(2つ)の時計は、修理完了していますので、HP上の『修理実績』で見る事が出来ますから、ぜひ見ていただきたいと思います。

・ジラールペルゴー女性用手巻き角形腕時計SSケース Cal.6189  994  ケースNo.8037 0108 17石も、おそらく45年以上前の代物ですが、ゼンマイが切れていましたが、なんとかパーツを入手して、修理完了したいと思っております。(余程のGPファンだったのでしょうね。当時としてはGPを3個所有しているなんて大変珍しいと思います。何せ日本ではその頃、オメガ、インターナショナル、ロンジンが 幅を利かせていた時代ですから。)

最近のジラール・ペルゴー社の活躍も素晴らしく、フェラーリとタイアップした、デザインの優れた自前のクロノグラフ・ムーブメントを新規開発して、素晴らしいデザインの垢抜けした腕時計のシリーズを発売しています。新規に搭載されたクロノグラフはCal.3080で文字盤側にコラム・ホイールを採用し特殊な構造をしております。クロノグラフモジュールを自動巻機構と、一体化した本格派で文字盤側にセットした特殊構造のムーブメントの為、直径 22.3mm、厚さ6.28mmという 小型化に成功しています。

時計の小話『第27話』でも 取り上げておりますので参照して下さい。

後の3個の修理依頼品は
・オメガ女性用手巻き丸形腕時計GPケース Cal. 620 ムーブNo19120348 17石これも地板を赤金メッキ仕上げをした、素晴らしい美しいムーブメントです。 Cal.620は1961年に完成して、それ以来あらゆる技術革新を取り入れ改良に改良されてきたオメガの薄型女性用手巻き腕時計ムーブメントの名機中の名機です。(ムーブメントの直径18mm、厚さ2.5mm 19800振動)

・チュードル婦人用自動巻き丸形腕時計SSケース Cal.ETA-2555  21石  ケースNo.7576/0 673171

・DEN-RO婦人用手巻き角形変形腕時計K18ケース Cal.フォンテンメンロン社60   17石 ケースNo.0.750 18K  (おそらく推測の域ですが、50年以上も前に、スイスにDEN-ROという商社がありその会社名をブランドにして、日本が輸入した腕時計だと思います。) 修理完了しましたら、これら3点もHP上で紹介する予定でおります。日本人は時計が好きな民族だと過去に於いて言われてきましたが本当にそうだなとつくづく思います