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2007年01月21日

●第236話(日本とスイスの時計産業の位置関係)

2003年度の統計資料によりますと、日本製(セイコー・シチズン・オリエント等)の 腕時計の生産(海外生産を含む)は、腕時計の完成品売上個数では、7921万個、 金額では、1136億円で、1個の単価が1,434円になるそうです。

ムーブメントの生産個数は、6億8721万個、金額にして、844億円で、1個のムーブメント単価が約123円になります。(余りにも金額が低いので愕然としてしまいます。)日本の2003年度の機種別腕時計の生産概要(海外生産を含む)、は水晶アナログ腕時計の生産個数は、7億3922万個になり、金額では、1734億円 になり1個の水晶腕時計の単価が、わすか234円になります。

最近、人気がとみに薄れてきた、水晶デジタル腕時計の生産個数は、2399万個になり、金額ベースでは、161億円になり、デジタル腕時計の1個の単価は675円になります。機械式腕時計は、おそらく中国で大多数を生産しているものと思われますが、321万個を生産しており、金額では、86億円になり、1個の単価は、それでも2,700円にしかなりません。僅かな数量の高級機械式腕時計のほとんどは、日本で生産されているものに 違いありません。

世界の腕時計の、総生産量は(完成品・ムーブメントを含む)、約13億個で、
日本は約7億個、香港は約3億個、スイスが約1億個、
その他諸国 (中国、ロシア、アメリカ、東南アジア)が約2億個になります。
スイスの腕時計の生産概要は資料によりますと、
機械式腕時計が、2900万個で、 金額では、4982億円もの高額な金額になり、
1個の単価が、17,180円になります。
日本の機械式腕時計の単価に比べて6.3倍もの価格になります。

スイス・水晶アナログ腕時計の生産個数は、2500万個で、金額では、3954億円になり、1個の単価は、15,816円になります。日本の水晶アナログ腕時計の単価に比べて67.5倍もの高価格になります。スイスでは機械式腕時計とクォーツ腕時計が
拮抗していることがこの数字から 窺いしれます。日本と同じ様にスイスでも水晶デジタル腕時計の生産個数は、減少の一途をたどっており、わずか40万個しか生産されておりません。1個の単価も、9,987円になります。(でも、どの機種でも日本製よりもスイス製の価格が高いのには商品に高付加価値がついているからでしょう。)

この上記の情報から読みとれる事は、スイス時計王国が、
見事に復活したことを、 如実に表している事を示すと思います。
そして、高級機械式腕時計の生産に力を入れ、それと見合う様に、
販売数量・金額も、 他国を圧して伸びてきている事を、表しています。
スイスの、腕時計の輸出先は、やはり、アメリカ合衆国が第1位で、1400億円、
第2位が、あにはからんや香港で、1300億円。
第3位が、意外にも日本で、935億円。第4位イタリアで、690億円。
第5位がフランスで、570億円。 第6位が、ドイツで535億円。
第7位がイギリスで、477億円になります。
世界の腕時計の金額ベースに占める割合は、スイスがダントツで1位で、
おそらく 70%前後を占めている事を考えれば、高級腕時計は、
スイス製、という事が 世界中の人々に、
再度、強く認識されてきた事を強く思わざるを得ません。

クォーツ腕時計が、出現した1970年当初、セイコー製が精度の面で、
圧倒的な優位に立ってスイス時計産業を大打撃を与えたものでしたが、
今では、消費者のニーズを的確に捉えた、
スイス時計産業の洞察力に軍配があがり、
さぞかしスイス時計産業に従事している人々は、
勝利の美酒に酔いしれているものと、私は推察しております。