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2007年01月21日

●第230話(新ムーブメント開発競争)

自動車業界には、リコール問題が必ず付きまといます。数年前のM自動車のブレーキにかかわるリコール隠蔽騒動や、最近では、H自動車のオートバイが高速運転中にハンドルが外れるという、命に関わる大きなリコール騒動がありました。人の命に関わる大きな問題なので、医療ミスと同等に大きくマスコミに取り上げられまた、担当行政機関が、厳しく監督改善命令を出す、という事が起きます。

時計業界に身を移しますと、10年来の機械時計の爆発的な復活により、時計メーカーの資金面での、余裕が潤沢に蓄積され、ここ2、3年スイス有力時計メーカーが矢継早に新ムーブメントを開発し売り出しています。一昨年はショパール、ランゲ&ゾーネが画期的なムーブメントを発表し、時計業界及び時計蒐集家の注目を集めましたが、今年になると、有力時計メーカーの百花繚乱的な様相を呈しています。

中でも、ジャガールクルトの 『Cal.923』 (双方向巻き上げ自動巻、28800A/h、32石、40時間駆動、 時・分・秒/24年のタイムゾーン表示、AM&PM表示、パーツ総数281)

『Cal.877』 (巻き上げ持続8日間、28800A/h、25石、ツインバレル方式、 パワーリザーブインジケーター、ビッグデイト表示、デイ&ナイト表示、パーツ総数217)

ロジェ・デュブイの 『Cal.RD54』 (手巻き、21600A/h、19石、時・分表示)
『Cal.RD14』 (片方向巻き上げ自動巻、28800A/h、31石、54時間駆動、厚さ3.43mmの薄型)

プログレスウォッチのクロノグラフキャリバー 『Cal.154』 (28800A/h、37石、コラムホイール方式、二階建てでクロノグラフモジュールを 載せるのでは無く、設計当初からクロノグラフ機構を組み込んだ方式)

ユリスナルダンの 『Cal.UN-66』 (双方向巻き上げ自動巻、28800A/h、109石、42時間駆動、 ビッグテイト式日付表示、24時間アラームセッティングインジケーター カウントダウンインジケーター、アラームオン&オフインジケーター)

オーデマピゲの 『Cal.3120』 (双方向巻き上げ自動巻、21600A/h、40石、60時間駆動、デイト表示、デイトジャスト方式、ジャイロマックス付きテンプ、 微調整機能付きヒゲ持ち、パーツ総数287、厚さ4.28mmの薄型)等に集約されます。

果たして今後、いろんなメーカーから新開発されたムーブメントが出てくるでしょうが、何十年に渡り、順調に、動き続けるかどうかです。時計業界にはかつて、リコール騒動というものが、ほとんど存在しませんでした。人間の生命に関わる大きな問題で無い為に、万が一設計ミスで不良箇所による、停止・故障という事があったとしても、公にはならず、静かに市場から消えていったムーブメントは数限りなくあると思います。新ムーブメントを搭載した、上記の腕時計の価格は相当小売価格が高く設定してある為、誰もが容易に購入出来る腕時計ではありませんが、もしこの読者の方で、 近々購入する予定のある方は十分深慮して、買って頂けたら、と思います。

あの、高技術を持ったローレックス社が新機種の複雑時計を安易に開発生産しない姿勢に、小生はロレックス社の良心的な社風を感じ入らざるをえません。(弊社にはこんな複雑な時計を作れるとだという技術をユーザーに目を見張らせて保持し迎合する姿勢よりも,安心して長く使える時計を販売するロレックス社の社風が 私は好きなのです。)

時計の機械は複雑になればなるほど部品数も多くなり、故障原因も多種多様化し、 メンテナンス期間も短くなり、それなりに維持費に料金が高くつく点を考えれば 色んな問題を内包しているのではないかと思っています。