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2007年01月21日

●第222話(厄介な作業)

先日久しぶりに、IWCフリーガーUTC自動巻腕時計(24時間のUTC表示・カレンダー付き・センターセコンド・Cal.37526・21石・ 28,800A/h・6気圧防水・ベース:ムーブメントETA2892-2)のオーバーホールをしました。いつもこの腕時計のOHするたびに思う事があります。1点のみ文字板側に非常に組み立てにくい作業があるのです。2階立て日送り車、小さな中間車、筒車、中間車押さえ板を同時に3軸に入れる作業が非常にやっかいな作業なのです。(2階立て日送り車の2枚の歯の間に筒車の歯を入れながら軸に入れなければならないからです。)

いつもこの作業を行う時、ヒゲ修正用のピンセットを両手に持って、両手に日送り車と筒車を持ち、その間に中間車と中間押さえ板を持って同時に軸にはめ込むのは、至難の業が必要です。特に中間押さえ板が、筒車の下の方の位置にいってしまう為に歯車が上手く噛み合わず、その調整に本当に苦労します。

ローレックスのGMT機構や、オメガのGMT機構と違って、IWCのGMT機構のフリーガーUTCは本当にやっかいな修理作業です。小生は時折するので助かりますが、IWCのサービスセンターに勤めておられる、フリーガーUTCを専門に修理する技術者の苦労が偲ばれます。(毎日して慣れてしまえば容易な作業かもしれませんが、でもやはり嫌な作業でしょう。)

最近のモーリス・ラクロアの様に、ETA2892A2のムーブメントにいろんな付加価値が付いた、複雑時計を生み出しているスイス時計メーカーがありますが、これから4~5年先にそれらがオーバーホールを迎える時期になると、日本の輸入代理店の修理技術者は大変な苦労をするのではないかと、思ったりします。(彼らには手引き書・マニュアルがあるから楽かも知れませんが、それでも大変な修理作業になると思います。)

やっかいな作業と言えば、クロノグラフの秒クロノグラフ針を取り外す時にも、大変な神経を使います。リセットボタンを押した時に、強い力で瞬時に零規正する為に、秒クロノグラフ車に秒針を強く押し込んであります。どんなに注意を払っても、秒クロノグラフ針が針本体と秒クロノグラフ車に埋め込まれるパイプとに別れてしまう時が時折あるのです。針とパイプのカシメ部が取れて二つに別れた時、ポンス台を使ってカシメし直す場合が起きます。

秒針のパイプも非常に小さい為、タガネで強くカシメるといとも簡単に変形してしまう為、細心の注意を払わざるを得ないのです。時計修理作業は、毎日、本当に神経が疲労する作業の連続です。