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2007年01月21日

●第214話(シチズン・コスモトロン・スペシャル)

水晶発信腕時計(クォーツ)と音叉式腕時計が出現するまでには、電池で駆動する腕時計はテンプを内蔵した電子腕時計が国内外とも幅を利かせていました(それ以前には接点式の電気腕時計も存在しました)。

特にシチズン社は『電子ウォッチのシチズン』と評価される程、電子ウォッチに力を入れ、バラエティーに富んだ電子ウォッチを次から次と発売してきました。その点では一歩セイコー社より先んじていたかも知れません。テンプ式電子腕時計の世界最高峰のキャリバーと言えば、シチズンのCal.7800番台である事に異を唱える人は誰もいないと思います。

それ程、Cal.7800番台は一部の隙も無い程、完全に作られていた究極のテンプ式電子腕時計でした(テンプ式電子腕時計がお家芸であったために、シチズン社が最初にクォーツを新販売したときもステップモーター機構ではなくロレックスと同じようにテンプ内蔵のクォーツでした)。

Cal.7801がコスモトロン・スペシャルのペットネームで発売され、Cal.7802がコスモトロン・デイデイトのペットネームで発売されました。ムーブメントの胴経は28.4mm、厚さは6.0mm、テンプの振動数は36,000のハイ・ビートでした。
この2機種のムーブメントは姉妹ムーブメントで、Cal.7801には時報合わせ装置がついておりました。

ランゲ&ゾーネ社が最近発売したモデルにも、時報合わせ装置を付いた腕時計がありますが、30年以上も前にシチズンはこの機構をすでに腕時計に採用しておりました。『時報合わせ装置』とは、8時の所にあるボタンを時報に合わせてプッシュすれば、正時に対して、時計の進み遅れが3分以内の時には瞬時にして分針と秒針が正時に帰零する、という非常に重宝なシステムでした。いちいちリューズを引っ張って、秒針を停止させ分針を合わせて、時報と共にリューズを押し込む、という不便さは全くありませんでした。

この時計は10振動というハイ・ビートの為、メカ式の優秀級クロノメータの精度を遙かに上回る高精度を持っていました。また、ゼンマイのトルク変動に伴う等時性の乱れが全く無い為に、日差+3秒前後というテンプ式調速機ではこれ以上望めない程の精度を一年間に渡って安定して動き続けた腕時計でした。

惜しいかな、この時計も音叉腕時計と同じく、1.3Vの電池を使用している為に、電池生産終了の為、入手が出来ず、修理依頼は最近はお断りしているのが残念でなりません。