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2007年01月21日

●第205話(シチズンレオパールについて)

Cal.77を搭載したシチズンレオパール腕時計のことをお話しします。この時計はキングセイコーハイビートに対抗するべく、シチズン社が全力を傾注して開発した高振動腕時計です。ムーブメントの直径は28.0mm、厚さは4.86mm、振動数は28,800振動~36,000振動です。

Cal.771がレオパールで発売され、Cal.773がシチズン・ハイネス(非常にシンプルなデザインで私の好きな腕時計でした。36,000振動。30年前で2万円位した手の届かない高価な時計でした。)Cal.779がセブンスターV2のネーミングで発売されました。

この時計のおもしろい機構の一つに、シチズン独特の日付と曜日の早送りの仕方があります。日付早修正が12時の位置を上にしてリューズを押すと変わり、曜日早修正は12時の位置を下にしてリューズを押すと変わるという、地球重力を上手く利用した方式です。このカレンダー早送り方式は一見手間がかかるように見えますが故障が起こる原因が少なく、カレンダー早送り機構がよく故障したセイコーCal.56系のようにはならない優れ物でした。

シチズンのこの高級機種には、セイコーと同じくヒゲ受けのヒゲ棒のアタリは当然両アタリ式を採用しています。よって、等時性に優れ極めて高い精度を持つ、シチズンの高級腕時計の一つです。

高振動腕時計の特徴は精度向上が挙げられますが、その要因には、トルクアップされたゼンマイの採用、高振動化されたテンプ運動、弾性係数の高いヒゲゼンマイ搭載によるテンプ往復運動の安定により、姿勢の変化による影響を受けにくく、携帯精度が常に安定した精度を維持する事が出来るようになっている事が挙げられます。

シチズンも、ハイビートのこの機種からは油拡散防止処理(エピラム液処理)を施し、長い間油が流れないような処理を施しています。ロレックスと同じ様に、アンクル爪石とガンギ歯車の噛み合い量が、通常並級品の4分の1から6分の1になって少なくなっています。当然、軸と穴石との遊びも少なく設計され、精密工作機械の向上により、高振動化が出来たものと思います。

今では、高価なエピラム液も入手出来る様になりましたが、30年前、一般の時計店ではこのエピラム液は入手出来る方法がなく、OHを依頼された時は、超音波洗浄及びハケ洗いはしないで、ベンジン液(精密機械専用揮発油)の中に入れてすすぎ洗いのみをして、アンクル爪油を注油したものでした。