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2007年01月21日

●第204話(時計修理の将来は)

5/21と5/28の2回に分けて、本年度第2回の時計通信講座を弊店にて行いました。遠くは埼玉、近くは富山から熱心な受講生8人の方が来られました。今回は各自が持参した手巻き腕時計を分解掃除してもらいました。

その中でも静岡県のY.K君は、私が与えた課題以上の事を前もって繰り返し勉強してこられたので非常に上達が早く、将来大変楽しみな生徒になる可能性が大です。
おおよそ4時間足らずでOHを完了し、次回講座予定の自動巻に取りかかってもらうほどの余裕でした。

長い間、不況のトンネルから抜け出せない日本経済の暗澹たる中において、手に技術を身につけたいと渇望する青年がこれからますます増えていくことと思われます。
こういう青年達をサポートするために、小樽市に全国職人学会(事務局長:伊藤一郎氏)が発足しました。将来、職人として身を立てたい青年達を助けるために、どんな技術を習得したいか、どこの地域で働きたいか、今までの経験年数はどんなものか、を聞いて、希望の職場に就職を斡旋出来るよう働きかける機関です。このような機関が出来たことは、非常に喜ばしいことです。

時計修理技術に関しては、これからますます需要が見込まれ、今後時計修理技術者は不足になることが目に見えてわかっています。弊店でもここ2~3年、クォーツを買う人よりも機械式を買い求める方が大変多くなりました。

3年間で16名の受講生を教えてきましたが、手巻き・自動巻くらいは修理依頼を受けても出来るような技術を今後自己研鑽して、習得して欲しいと思っています。手に技術を身につけることは、景気・不景気に関係なく、仕事の依頼が安定してくるものです。エリート・ビジネスマンに憧れることもいいかもしれませんが、実社会を屋台骨から支える職人という職業に、若い人には熱い眼差しを向けて欲しいと思います。

先日、テレビに世界的に有名な脳神経外科医:福島先生のことが取り上げられていました。先生自ら工夫して作った何十種類の手術工具(時計旋盤のバイトのような形状)を駆使し、脳に出来た極微量の腫瘍を取り出す手術工程を見て、本当に繊細な神経を使う手術だと感服しました。直径1mm単位の血管を損なうことなく、奥深いところにある腫瘍のみを取り出す、手先の器用さは時計職人の毎日の作業と一脈通じるところがあるのではないかと感動しながら、テレビを見ておりました。

医師になるには適性と共に、相当一生懸命勉強しなくては、とてもなれない職種ですが、時計修理は根気と忍耐力と生真面目さと手先が器用であるという取り柄があれば、ほぼ誰もがマスターできる技術だと思いますので、若い人達がこの世界に飛び込んできてくれることを願ってやみません。