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2007年01月21日

●第203話(人気のノモスについて)

昨年6月頃から弊店ではノモスが人気を集め問い合わせが多くなり、弊店での手巻き腕時計売上げNo.1の実績を作っています。裏スケルトン仕様があるので、どのような機械でどんな仕上げをしているかおおよそのことは掴んでいましたが、この間OHする機会があり、機械をバラシながら十分に観察することが出来ました。

ムーブメントはETA社製(1971年に買収したプゾー社製:Cal.7001)ですが、ノモス社独自でこのムーブメントを最高ランクにグレードアップしています。毎時21,600振動、厚さは2.50mmの薄型ムーブメントで、パーツ総数は100個ありました。

特に驚かされたことは、緩急針の精度調整機構です。ETA社方式を取り去り、ノモス独自の「トリオビス・ファイン・アジャストメント」を装備しています。この方式はスイス高級時計:ジャガールクルト社によく採用されている、微細精度調整が出来る優れた緩急方式です(買って頂いた方より、想像した以上の精度が出るために喜びの声が多く店に届いています)。

ヒゲ受け・ヒゲ棒もETA社の同時可動式(ヒゲ受け・ヒゲ棒が一緒に動く)ではなく、高級アンティーク腕時計に見られる、一番最良の方式を採用しています。ヒゲ受け・ヒゲ棒の隙間も少なく、ヒゲゼンマイを両当たりにして等時性を高めています。ヒゲゼンマイにはニバロックス社製を採用し、安定した精度が出るように外端曲線等、工夫調整しています。

角穴車は「グラスヒュッテ・サンカット」という独特の研磨がしてあり、ゼンマイを巻く時にその形状が目に焼き付きます。文字板側の地板にはペルラージュ加工が施され、針はバトン型のブルースティールで、直線的な形がノモスのデザインにピッタリ合致しています。

地板止めネジはブルースティールのネジを採用し、地板は傷の付きにくいグレイン仕上げがしてあり、そのコントラストがとても美しく見えます。このノモスのムーブメントは、もともとはETA社製のパーツを基本としていますが、全てをノモス社がキレイに再仕上げ加工しています。ですから、地板に「NOMOS」のムーブと名乗ることをETA社が特別に承認しているほど、優れたムーブメントです。

これほどまでにチューニングしているにも関わらず価格を低く抑えているために、余計に人気が出たものとおもいます。また、こんなに日本で人気が出た原因の一つに、バウハウス精神を継承して、とことん無駄をそぎ落としたデザインが日本の簡素な美と一致したからではないでしょうか?