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2007年01月21日

●第197話(先生のタイプについて)

日本時計師会(前・米国時計学会日本支部CMW)を構成する諸先生には2通りのタイプの方がおられました。学究肌(理論派)と職人肌(技能派)のタイプの先生です。学究肌(理論派)の代表的な先生に末 和海先生(大阪府立大学出身)、小林敏夫先生(大阪大学)、小野 茂先生(東京理科大学)、小原精三先生(神戸大学)、行方二郎先生、多田稔先生、佐藤政弘先生(東京工業大学)等がおられました。

一方、職人肌(技能派)の有名な先生に角野常三先生、野元輝義先生、米国時計学会から特別褒賞を受けられた菅波錦平先生、東北の孤高の技術者・大川勇先生です。これらの諸先生方は日本の時計技術のレベルアップのために献身的に地方を回られ後進の育成に努力されました。時計店を経営されながらのその行為は今日、高く評価されるべきと思っております。

その諸先生方の薫陶を受けたCMWは全国津々浦々まで誕生したのです。特に小野 茂先生と菅波錦平先生は海外の著名な最高権威の時計技術者デ・カルロ氏(英国)、ヘンリー・フリード(米国)に非常に似た先生で日本のデ・カルロ、日本のヘンリー・フリードと言われておられました。

私もこのお二人の先生の書物には大変お世話になりました。今まで自分が苦労して会得してきた修理技術を惜しげもなく披瀝されたのです。それまでこの業界では技術は教わるより盗めと言われたほど閉鎖的でしたが、これらの諸先生方のお陰で率先して新しい技術を公開するのが当たり前の風土が出来たのです。