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2007年01月21日

●第192話(時計技術習得について)

今年度の時計技術通信講座(第三期)第一回を2月19日と26日の二回に分けて、計8名の方が参加されました(今年は受講希望者が多くやむえなく、 8名の方を取りましたが、さすがに終わってみたら疲労困憊で来年はどんなに多くの方が募集されても4名しか取らない予定です)。

今回は各講座生に教材として19セイコー懐中時計(セコンド・インダイアル式)をオークションやアンティークショップで購入してもらいました(入手価格はおよそ¥15,000~¥25,000です)。第一期生・第二期生には、弊店が保有している19セイコーを教材として提供していましたが、のべ8人の方にあっちこっち触られてしまったので、とても調子が悪くなってしまい、今回は受講生の方に各自負担で用意をしてもらいました。

機械式19セイコー(セコンド・インダイアル式 15石)は25年以上も前に生産をうち切られておりますが、国鉄及び各社鉄道用に大量に使用されていた為、まだまだ廉価で入手出来ます。

機械式19セイコー(セコンド・インダイアル式)のムーブメントと本当によく似た懐中時計が現在、ゼニス社から発売されています。その品番は「07.0051.141」で、定価は何と¥630,000もします。よって、19セイコーを高くても¥30,000以内で現在入手出来るのですから、機械の精密さ・高精度の出るブレゲ巻き上げヒゲの調速機搭載等を考慮すれば、非常に安い買い物なので、受講生の方に最高の教材になるので、無理言って買っていただきました(19セイコーは高等技術者が修理時間を度外視して調整すれば日差3秒以内におさまり高精度がでる最高のムーブメントです。チラネジ天輪でミーンタイムスクリュー付きで、今もしセイコーが生産再発売すれば、ゆうに20万円以上の値が付く高級機種だと思っております。現行の腕時計に見られる飾りだけのチラネジ天輪ではなく、実際にチラ座を入れて片重り調整が出来る本格的なテンプです)。

受講生8人の方も一日がかりで分解・洗浄・組立・注油等の作業を全てうまく完了し、帰られる時には順調に動いていました。機械がとにかく美しいから皆さん感動されていたようです。

話は変わりますが、今年からロレックス社が時計技術学校を東京に開校しました。
期間は2年間で、授業料は1年間100万円、初年度だけ工具代30万円かかり、2年間で総額230万円かかるそうです。

講師をされる人は若いお二人で、少人数の生徒を教えられるそうです。その学校の名前は「東京ウォッチテクニカム」と言います。これから時計技術を専門的に学びたい若い人達にとっては、いろんな選択肢が増え、朗報だと思いました。

1.近江時計眼鏡宝飾専門学校(滋賀県・大津市)
 期間:3年間、授業料他:約450万円前後

2.ヒコ・みづのジュエリーカレッジ(東京都・渋谷区)
  ・ウォッチメーカーコース
   期間:3年間、授業料他:約500万円前後

3.東京ウォッチテクニカム(東京都・江東区)
 期間:2年間、授業料、工具代:約230万円

4.WOSTEP(ウォステップ)時計学校(スイス・ニューシャテル市)
 期間:3年間、授業料:約?万円(情報がないのでハッキリした金額はわかりませんが、日本の時計学校とほぼ同額だと聞いております)

各学校の授業料が高いので、若い人にとっては相当な負担がかかると思います。
時計技術は奥が深いので、基本を2~3年間でゆっくり教えるのが理想なのかもしれません。しかしながら、基本的技術を集中的に教え込み、生徒が情熱を持って自己研鑽すれば、私は1年という期間があれば十分だと思っています(ランゲ&ゾーネ社が短期間であのような見事な復活を成し得た大きな理由は、技術者養成カリキュラムが即効性のある実践的教育だったからでしょう)。

私は時計技術を本格的にやりだして、ほぼ1年間で基本的な時計技術をマスターしました。大津の行方先生の技術講習会を2回受け、大阪の加藤先生にも 3回ほど旋盤技術・調整技術を教わり、菅波錦平先生には1年間にわたり通信教育を受けました。あとはほとんど時計技術専門書を繰り返し繰り返し読んで勉強しました。最近、私が時計技術の座右の銘として大切にしていた本が復刊されたことをとても嬉しく思っております。一つは「基礎時計読本:小林敏夫先生著 ¥5,000」、もう一つは「標準時計技術読本:CMW日本支部編 ¥5,600」です(内容を考えれば非常に良心的な価格です)。販売先はラ・テール出版社で通信販売をしています。

おそらく復刻部数が少ないと思われますので、将来時計技術者を目指す人は、早めにご購入されることをお薦めします。