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2007年01月21日

●第190話(独立時計師アカデミーについて)

今、日本で人気がある腕時計の中で、スイス独立時計師アカデミーが作ったものが特に耳目を集めています。その代表的なアカデミーは、フランク・ミューラー氏、フィリップ・デュフォー氏、アントワーヌ・プレジウソ氏等でしょう。

ここ15年間、卓越した技術を持ったスイス時計師達が自分のブランドを立ち上げ、製作販売し出しました。彼らが何故独立時計師になれたのかは、 1970年代~80年代のクォーツクラッシュの影響が大いに及ぼしたものと推測しています。何故なら、狭いスイス国土の中に、当時は1500社以上の機械式時計関連企業があったからです。クォーツクラッシュのために、多くのエボーシュメーカーが倒産・廃業に追い込まれていきました。その数は1000社以上にのぼるものです。(おそらく膨大な数にのぼる時計工作機械がただ同然の値で引き取られていったことでしょう。)

日本のセイコー、シチズン等のマスプロ・マスセルを社是とする一大時計メーカーと違い、スイス時計業界は家内手工業の小規模な部品メーカーが分業し、時計作りをしていました。廃業に追いやられた小規模なエボーシュメーカーの時計製作用の工作機械を、おそらく想像を絶する安価で独立時計師達は手に入れられたからではないかと思っております。(フィリップ・デュフォー氏は倒産したコモ社の時計工作機械を入手し、自宅の工房に持ち込み、製作をし出しました)日本の時計メーカーの時計工作機械は大がかりな物で、とても個人で所有出来るものではなかったのです。

日本にもスイスと同じような状況におかれていたら、アカデミークラスの技術を持った人達がおられるので、おそらくその仲間入りが出来たことでしょう。スイス独立時計師に匹敵する技術を持った人は日本にも何人かはおられます。末和海先生、行方二郎先生、多田稔先生等は、もしスイスに住まれてたら、当然アカデミーの仲間入りになり、独自の新機構の腕時計を開発されていたでしょう。私なんかがお側に寄れない腕を持った高級時計師は日本全国にまだまだ沢山おられます。その方々は労働省から卓越技能者「現代の名工」として、褒賞されています。(そのほとんどの諸先生方は、CMW技師で各地方に一名の方がおられます)

将来、日本にもスイス独立時計師アカデミーに負けない時計技術者がこれから出てくることを期待しています。それには必須条件として、いかにして安価な時計工作機械を入手出来るかにかかっていると言っても過言ではないでしょう。