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2007年01月21日

●第189話(メカ式GSの精度・続編)

世界中に高級腕時計メーカーがたくさんあるにも関わらず、弊店のホームページ左メニュートップにグランドセイコー(GS)を取り上げているのは、この業界に入って約30年間の熱い思い入れがGSにはあるからなのです。

私がこの業界に入った頃(おそらく今でもそうですが)、GSは車で言うとトヨタ・クラウンに匹敵し、キングセイコー(KS)はトヨタ・マークIIに当てはまったのではないかと思っています。

25歳の頃、実家の時計店を手伝っていた頃、親父に「KSを買いたいけどいいかな?」と言いましたら、親父は即座に「まだお前には早い」と言われ、買うことが出来なかった記憶があります。KSでも高嶺の花で、ましてやGSと言えば手に届かない夢の時計であったのです。セイコーウォッチ販売(株)の社長さんが、齢60歳近くになって憧れのGSを初めて手に入れたように、私にとってGSはまさしく憧憬の腕時計だったのです。

父親も時計店を長年経営しているにも関わらず、50歳頃になって初めて新品のGSを自分用におろしたのを見ました。私はKSを持てなかったので、セイコー5を時間をかけて精密調整し、GSの精度に負けない正確さの腕時計にし、愛用していました。

セイコー社を私が何故こんなにまで愛しているのかと言えば、KSよりも廉価版の「ロード・マーベル」、「クラウン」、「スカイライナー」、「セイコーマチック」、「ロード・マチック」、「5アクタス」等は、完璧に修理調整すれば、優秀クロノメーター規格以上の精度が出る良心的な時計づくりを創業以来、ずーっと続けてきた時計会社だからなのです。(腕時計設計力は世界一だと思っていますし、機械のどこを見ても手抜きのない時計作りをしているのがセイコー社なのです。)

前回、現行のGSにあのような辛口批評が出たのは、セイコー社やGSを長く愛してきたからなのかもしれません。これからも私が生きていく限り、セイコーGSを愛し続けてやまないでしょうし、GSが世界的に認められ、パティックに負けない最高峰の腕時計として君臨して欲しいと願っているからなのでしょう。また、それが当然の正当な評価の腕時計であるからなのです。

30年前以上の腕時計のOHで、私の技術にすぐさま反応し、応えてくれるのは、GSとロレックスなのです。そういう時計づくりを長年してきたセイコーとロレックスに対して、私は深い尊敬と敬愛の念を抱いています。