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2007年01月21日

●第172話(ランゲ&ゾーネ社について)

時計王国と言えば誰もがスイスを連想されると思いますが、ドイツにも昔から時計産業はありました。ドイツ・グラスヒュッテ地方には、1845年創業の孤高のメーカー、ランゲ&ゾーネ社(ランゲとその息子達という意味です)が存在します。

ランゲ&ゾーネ社は第二次世界大戦終了後、グラスヒュッテ地方が東独に入ったために工場が国有化され、伝統を誇ったランゲ&ゾーネ社は、一度そこで消滅しました。

しかしベルリンの壁が崩壊後、4代目当主・ウォルター・ランゲ氏によって、1994年見事に復活をなしえたのです。その復活した時計とは、今では流行になったアウトサイズ・デイト機構を初めて搭載し、パワーリザーブ表示・スモールセコンド・裏スケルトンの手巻きで登場しました。このような見事な機械がわずか4年間という短い開発期間で出来た事は本当に驚愕的な出来事なのです。ジャガールクルト・IWCの協力があったとは言え、このような時計を商品化出来たことはランゲ&ゾーネ社の底力をまざまざと世界に見せつけた事に他なりません(当初、再登場したとき、各スイス時計メーカーが震撼したことは容易に想像できます)。

最近では、ゼンマイのトルクを均一化する鎖引き装置を搭載した腕時計を開発発売しました。鎖引き装置と言えば、超高精度を誇るマリンクロノメーターにかって採用されていましたが、それを腕時計に採用すると言うことは、画期的な事なのです。ゼンマイのトルクを均一化すると言うことは、平等時性を安定化させる為にかかせない事です。その機構を小型化して腕時計に搭載するなんて想像すらできえないことでした。

現在では年間生産本数は4,000本近くにはなっているものと思いますが、このような腕時計をここまで成長させた4代目当主に頭が下がる思いです。

このような最高度の腕時計を作り出す時計メーカーの技術者の半分以上が、女性で占められているという事は前回書きましたが、短い時間にどのような技術指導をして組立調整技術者を育てられたか聞いてみたいものです(素晴らしい技術指導者がおられるものと思いますが、指導マニュアルが完璧なシステムを構築していたものとおもいます)。

他、ドイツ・グラスヒュッテ地方には、もう一つの時計メーカーが復活をなしえました。
それは当店でも人気のあるNOMOSです。ドイツの時計はどれも質実剛健で地味でシンプルな味わいがありますが、使えば使うほど愛着がおきる深い腕時計だと思います。NOMOSの機械は数年後当店に修理依頼が来るものと思いますが、ランゲ&ゾーネの機械を直に触るチャンスはなかなか訪れないと思うと残念でなりません。