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2007年01月21日

●第164話(クィーンセイコーについて)

石川県のEさんから、1963年製(第二精工舎)のクィーンセイコー(Cal、330 23石)の修理依頼を受けました。

中2針で薄型に作られていて地板等は全て金メッキが施されていました。なかなか美しいムーブメントでした。特に驚嘆したのは小型婦人用ムーブであるにもかかわらずヒゲ棒の間のヒゲゼンマイ遊び隙間の調整が、丸型レバーを回す事により簡単に微細な調整が出来るように工夫がされていたこと事です(女性用でこんな完璧な機構をもった機械は今まで見たこともありません)。名機のセイコー45キャリバーもそうですが第二精工舎がいかにヒゲ棒隙間に苦心惨憺し固執・拘泥してきたか窺い知れます。

最近何回となくメカ式クレドールの機械を見ましたが、ヒゲ棒隙間調整に対して、昔ほど丁寧な作りがなされていません。おそらく、あのやり方ですと、昔の機械を凌駕するのは難しいのではないかと私見ですがそう思います。

若い現役のセイコーインスツルメンツの時計設計技術者の方々に苦言を呈したいのですが、第二精工舎の過去の名機(ロレックスと比較して何ら遜色がないほど素晴らしい機械)をもう一度じっくり見て研究されたらどうでしょうか?(いいお手本の機械が一杯あるのですから、そして井上三郎先生、久保田浩司先生、小牧昭二郎先生、依田和博先生等、最高の先輩がおられるのですから)。

Eさんのクィーンセイコーは素人がいじったか?あるいは未熟な職人がいじったためにヒゲゼンマイが滅茶苦茶に壊れていました。このごろ多いのですがアンティーク・ウォッチの修理依頼を受けますと素人の方がいじっているのによく当ります。時計の修理は簡単ではないので素人の方は絶対機械をいじらないようにお願いしたいです。