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2007年01月21日

●第161話(日本の時計産業の中心・諏訪地方)

長野県の諏訪地方に時計産業が発達したのにはいろんな理由があります。スイスとよく似た気候風土で、内陸部の寒冷地であった事や、ねばり強くて辛抱強い人柄や、豪雪地帯で交通の便が非常に悪かった事などにより仕事が少なかった事などがが考えられます(その点では北陸地方も似てるかなと思います)。そして諏訪地方の特産物であった養蚕業が斜陽化し、若く質のいい労働力が余剰気味であった事も幸いしたかもしれません。それにもまして一番の功労者は、何と言っても初代諏訪精工舎(現セイコーエプソン)社長の山崎氏の努力に負うものが多いと思います。

スイスと似通った点は多々ありましたが、一点だけ違うのが大きく立ちはだかり、災いしました。それは、湿気(湿度)がスイスと違って非常に多かった、と言う事です。
創立当初の諏訪精工舎も、この湿気の多さに、ほとほと弱り、難渋したとの事です。
腕時計を組み立てて出荷しても、機械の錆で止まり、苦情が多かったと言う事を聞きました。

諏訪精工舎の著名な女性時計技術者・中山きよ子さんは手に汗をかかない事で有名で、彼女が組み立てた腕時計は、錆付かなくてクレームが少なかったと言う事でした(現在ではどの工場も空調設備がしっかりしていてそんな心配は杞憂でしょうが)。

日本は高温多湿のジメジメした気候風土なので、精密機械等にとっては、非常に難敵な土地柄です(そして1年に1回必ず梅雨時がやってきます)。いくら、防水時計で水に浸けなくても、空気中の湿気が時計内部に入り込み、錆を起こさせるという事も充分、考えられます。

スイス高級腕時計は、当初「アンクルホゾに注油しない」と言うのが一般的常識でした。アンクルホゾに注油すると、油の抵抗でアンクル竿の動きが微妙に悪くなり、天府の振り角に影響を及ぼし低下します。しかし日本では湿度が高い為に、アンクルホゾに油をささないと、ホゾが錆びて停止すると言う故障の原因になったりしたのです(実際そういう事例に多く当りました)。ロレックス等はアンクルホゾに油をささないのが普通でしたが、当店では錆防止のために、アンクルホゾに注油します。

約40年前の腕時計は、真鍮側の金メッキやクロームメッキが多かった為、汗をひどくかく人や日本の湿気の多さの為に、2~3年でケースが錆だらけになり、極端な場合、緑青がふいて腐食のため小さな穴が開いたこともあったほどでした。10、20気圧防水の腕時計と言えども、水泳したり、サウナに入ったり、車の洗浄の時には、過剰な水圧がかかり水が入らないとも限りません。スキューバーダイビングの時は、万が一水が入っても安価な使い捨て出来る防水クォーツをはめられる方が賢明ではないでしょうか。