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2007年01月21日

●第156話(冷や汗)

最近修理中で、この蒸し暑いのにゾーと寒気が襲った事がありました。熊谷市のY様から修理依頼受けた、セイコーベルマチック(4006A 27石 1968製諏訪精工舎)の修理です。

裏ブタを開けてみましたら自動巻き機構が錆びていたので錆をキレイに落としました。回転するアラームメモリー板を押さえるバネも折れていたので、それを別作調整して、部品総数200前後のものを全てバラシて洗浄し、組立注油の段階に入りました。

輪列、1番、2番、3番、4番、ガンギ車、と組立てようとしたところ、どうしてもうまく組立がいかず、ホゾを確認してみたら、ガンギ車の上ホゾが折れているではありませんか。「うわー、なんだこりゃー!」と思いました(ガンギ車のホゾが折れている事は滅多にありません。折れているのは年に1回か2回くらいでしょうか)。分解する前に、まさか折れているとは思わず、確認しなかったのがミスでした(馴れはダメですね)。分解する前に折れているのがわかれば、古い時計なので修理依頼を断わっていたのですが、全て分解洗浄した後なので、バラしてお客様に返すわけにもいかず、組立して返却しなければならないので、6時間という貴重な作業時間が失われるのにガックリしました(もちろん修理料金を1円もいただくわけにもいきません)。

わらにもすがる気持ちで、当店取引先のS時計材料店にガンギ車の在庫を問い合わせましたが、アッサリと「古いのでもう無いです。」と言われてしまいました。無くて元々なので、全国アッチコッチの時計材料店に問い合わせましたら、何と、最後に聞いた大阪のT時計材料店に、34年前のそのガンギ車があるという事でした。その時の嬉しさはROLEXを販売した時の喜びと同じような大きさでした。「ワァー、あった」と思わず声に出したほどでした。

やはり、耐震装置が付いていない腕時計の歯車を分解する時は、面倒でも万が一があるのでホゾの確認をしなくてはだめだ、と改めて認識した次第です。