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2007年01月21日

●第137話(IWC・GSTアラームの修理について)

読者の方から先月、IWC・GSTアラーム腕時計(定価66万円)の修理依頼を受けました。雑誌ではよく見ていましたので、どんな機械が搭載しているのか?興味津々でした(IWCは最近ほとんどの時計にETA社ムーブを採用しているので、久しぶりに自前の機械を入れているのかなと半分、期待していました)。カタログでははっきり書いていないので想像が出来ませんでした。

裏ブタを空けてみて解りましたが、ジャガールクルトのマスター・レヴェイユ(Cal、918)の機械とまったく同じでした。音色ははっきり言ってジャガールクルトの方が良かったような気がします(リンの形状がJ・Lの方が工夫されています。マニューファクチュールだから当然かもしれませんが)。美しい機械で、修理しながら、さすがJ・Lだと関心仕切りでした。

分解途中でドキッとしたことは緩急針のひげ棒(ヒゲ受はありました)が無かったことです。一瞬、前回の修理者がミスして折ったのではないかと疑いました。スイス高級腕時計は普通は2本のひげ棒でヒゲゼンマイを支え挟んでいる(ヒゲ棒とヒゲとの隙間は理想は0,0076mm以下)のですが、其れがまったくないのです。ヒゲ受の外側にヒゲが付いているのみで、それで緩急を調節するのです(一種の外側片あたり状態)。30年修理してきて初めてお目にかかる方式です。この方式で精度が出るのかと疑いましたが不思議と精度は出ました。

よっぽどテンプ一式の片重りを調整と、ヒゲの内端曲線修正しているものと想像しました。でもこの方式は他のメーカーに真似て欲しくないと思いました(私見ですが邪道のような気がします)。