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2007年01月21日

●第135話(ヒゲゼンマイの調整)

最近、こういう修理が増えました。1~2年前に、ある輸入代理店のサービスセンターでOHしたのですが、時計が1日30秒~50秒狂うという歩度調整の修理依頼です(30万円~50万円の高級機種で、精度は-3秒~+15秒以内に収めなくてはなりません)。

中の機械を見てみましたらヒゲゼンマイがうまく修正されていないのです。ヒゲ棒の中のヒゲが片当たりで、内側ならまだ許せるのですが、外側に強く当たっていたり、ヒゲが一方に偏心して伸縮していたり、ヒゲ持ちの高さが適切でないためにヒゲ全体が皿のようになっていたり、またその逆で、なだらかな丘陵のようになったりしているのです。また、変にいじったためにヒゲ全体が水平ではなく傾いていたりしているのです。これでは当然、時間の等時性が無いのは当たり前で、もう少し慎重に丁寧な作業をして欲しいのです(ヒゲゼンマイはヒゲ棒の間は、かすかな両当たりで(2重キズミでやっと解る隙間)、天真を中心として、できうるだけ偏心しないで伸縮しなくてはなりません。 ヒゲ全体も完全な水平でなくてはなりません)。

苦言を呈したいのですが、もう少しヒゲゼンマイの理論と実技の修得をして欲しいと思います。1日の修理個数のノルマを消化するために、このような修理になってしまうのかも知れませんが、お客様から修理代金を頂戴する以上、もっと完璧に直して欲しいものです。

サービスセンターの若手修理技術陣の人や、近江時計学校の生徒さん、ヒコミズノの時計学校の生徒さんには是非下記の本を入手して熟読して欲しいと思います。
H・イェンドリッキー著(小牧昭二郎先生翻訳)『腕時計の調整』、同じくH・イェンドリッキー著(CMW小野茂先生翻訳)『時計技術入門書』、 ドナルド de カルレ著『実践的腕時計の調整』です。

この3冊の本を私は若いとき何回となく読むことによってCMW試験に合格しました。
今ではなかなか入手出来ない本かも知れませんが努力して捜してみてほしいと思います。