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2007年01月21日

●第131話(時計材料店について)

弊店では部品入手不可能なアンティーク・ウォッチの修理依頼の場合、天真・巻真入れ替えのケースは時計旋盤で自店で別作します。時計旋盤等で別作できない部品交換の時は、時計材料店に在庫があるかメーカーから取り寄せが出来るか問い合わせます。スイス時計メーカーによっては時計小売店にも時計材料店にも卸さない輸入代理店の会社もあり、いろいろ大変な目に遭う時があります。

弊店の取引先であるS時計材料店は店主がCMW公認高級時計師で、どんな厄介な部品入手も殆ど上手くやってくれてとても助かっております。S時計材料店当店担当のK女史は修理は出来ないのですが本当に時計に詳しくて、当店にとって欠かせない大きな存在です(このような時計材料店がだんだん少なくなっていくのが本当に寂しい気がします)。

時計店の親爺さん達が時計修理技術の腕前を競った今から20~30年程前は、各県に1~2軒の時計材料店が必ずありました。当時は工具マニアの時計屋さんも沢山おられまして、新作工具を買われては店に自慢しに見せに来られました。

精工舎の新キャリバーの技術講習会にはベルジョン・ボーレー・GEM(ジェム、ムラキ製)・アロー(松田光)・明光舎・トップオカモト等の工具メーカーが展示即売会を開いていました。講習会が終わったら人だかりで、我や先で買い求める風景が当然の如くでした(その頃、時計屋は皆さん時計技術習得にすごく熱心だったのです)。
30年前、父から3万円の給料を貰っていましたが、その殆どは工具代に消えていきました。

その頃買ったスイスDUMONT製ピンセット数本は、今でも大切に愛用している工具です(当時でも3000円前後した高級機種のピンセットでした。今では1万円以上するのかなー)。一番高い買い物はジャッコツールという天真ホゾ研磨機で、30年前でも確か90000円以上しました。今買えば数十万するのかな?(高価なわりには利用頻度が少なくて後々大変後悔しました。当時の人口4万人の長浜市にはスイス高級時計の修理依頼が少なくて利用価値がほとんどありませんでした)

最近こんな事がありました。タグホイヤー(オートマ)の修理依頼を受けたのですが、リューズのネジが摩耗して、ケースのリューズ受けにロック出来ない状態で、リューズ交換のためにS材料店に注文を出しました。ところが代理店であるL・・ウォッチ・ジュエリー・ジャパンが、リューズのみを時計材料店や小売り店に売ってくれないのです。
やむをえず輸入代理店に時計を送り、リューズを着けて貰ったら、何と下代7560円も取られてしまいました。たかだか上代3000円前後のパーツが倍以上かかってしまうなんてちょっと言葉を失いました。時計店の技術をないがしろにしているのか、それとも修理部門でも利益を上げたいのか、そのどちらかでしょうが、輸入代理店のこの姿勢には疑問を持たざるをえません。こういった考えの代理店が多くなってきたことを残念に思います。ユーザーの方々に出来うるだけサービスを安く供給する理念があるなら、この企業姿勢は早く撤去して欲しいものです。