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2007年01月21日

●第118話(タイメックス時計について)

今から35年程前に、(株)マルマン(ライター・ゴルフクラブのメーカー)が輸入代理店になり、アメリカ最大の時計メーカータイメックスが日本に上陸しました。廉価版時計メーカーとしては世界最大級の規模の会社なので、日本の時計メーカーは戦々恐々の状態でした。当時では画期的な価格で2~9000円の低価格であり、それも1年以上動くという接点式電気腕時計とピンレバー腕時計の二本立てでした(構造は部品数を徹底的に減らし単純化された機械でした。簡単に組立が出来ました。スイス高級時計と比較したらオモチャ?のような機械でした。ちょっと失礼かな)。

マルマンの意気込みももの凄く、全国各地で技術講習会を開きました。時計店の親爺さんの関心も高く、講習会は何処でも満員だったということです。時計といえば高級品というイメージが大きい日本人にとって、大変な価格のインパクトでした。しかし話題が大きければ大きいほど、しぼむのも早く、アッと言う間に市場から消えてゆきました。

その原因は時間の誤差に対する認識が、日本人とアメリカ人とでは大きな差があったのです。タイメックスの、日差が1~2分もでる誤差に、几帳面で時間にうるさい日本人はついていけなかったのです(アメリカ人は時間に対して寛容だったのでしょうか?その頃の国鉄が秒刻みで動くのに対して、アメリカの鉄道は5分~10分の遅れは当たり前の時代でした)。それと故障がいろいろ多かったのも致命的でした。

スイスのいろんなエボーシュメーカーもタイメックスに負けじと色気をだして、超低価格のピンレバーウォッチを日本に売り出すためになぐりこみをかけましたが、こちらも誤差が1日2~3分も出るために、全然受け入れられませんでした(価格は1~2000円でした)。

タイメックスの登場に慌てたセイコー舎は、7石入りのクラブツースレバー脱進機のトモニー・ブランドの廉価腕時計を売り出しました。こちらはそこそこ時間が正確なため市場に受けいられ、長い間愛されました(精度、日差1分以内)。

現在のタイメックス社は魅力のある腕時計を一杯生産しておりますが、ポリシーは一緒でやっぱり良心的な低価格です。現在はコサリーベルマンが代理店で、若人に大変な人気があります。勿論クォーツ一辺倒で、昔と違い時間は極めて正確です(組み込まれた電池は1,5ボルトの普通の物と違い、3ボルトの特殊なものが多いです)。