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2007年01月21日

●第187話(ピアジェのOH)

昨年12月、長崎県のTさんからピアジェ極薄手巻き腕時計(Cal.9P2 18石、ムーブNo.818749、厚さ2.01mm・直径20.7mm、K18WG側・文字板オニキス)のOH依頼を受けました。ピアジェはスイス高級腕時計4社(パテック、バセロン、オーディマ)の中の1社で、世界中にファンを持った有名時計会社です。

ワクワクして荷物の到着を待っていました。宅配便が届き、梱包を開けて見てみますと、文字盤に貴石のオニキスを使っているではありませんか。ピアジェは文字盤に貴石やメレーダイヤを沢山埋め込んで使っている宝飾時計メーカーとしても、知られています。厄介なことに、オニキス等の貴石を使った文字盤は、針を抜く時によほど慎重に作業をしないと、ヒビが入る可能性が極めて高いのです。

ヒビを入れてしまうと、交換するのに数十万円かかる為、ミスは絶対に許されません。万が一作業ミスでヒビを入れた場合、店が全額負担しなければならず、どんな腕のいい職人がいる時計店でも、修理依頼を100%断るのが常識になっています。(エージェント送りが当たり前なのです。)文字盤にヒビを入れてしまい、弁償したという話を以前に何回か聞いた覚えがあります。

私も今回受け取って、断ろうかと思いましたが、前回にも修理依頼を受けている人ですので、何とかしてやりたいと思い、ケースを開けてみました。開けてみると、オニキスの厚みが若干厚く感じられたので、「やってみよう」と決断してみたら、うまく作業が終了し、ホッとした次第です。時計本体の修理よりも、針を抜く作業の方が数倍難しいと言うことがあるのです。

ピアジェ社はカルティエ、オーディマ・ピゲ等にムーブメントを供給してきたマニュファクチュール(自社一貫生産メーカー)です。最近では新設計の薄型手巻きCal.430Pを開発し、「ウルトラシン」と言うネーミングで売り出しました。また、自動巻Cal.500Pを搭載した「アップストリーム」は、新機構のクラスプベゼルを採用しています。どちらとも非常に魅力のある腕時計です。