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2007年01月21日

●第184話(『ランゲ&ゾーネ』についてNo.2)

昨年12月末、大阪に用事があったので、ついでにD百貨店の時計売場を見てきました。その中に『ランゲ&ゾーネ』のコーナーがあり、ランゲ1(定価230万円)とダトグラフ(定価595万円)が各1本づつ陳列してありました(さすが大手百貨店だなーと感心しました)。

雑誌ではどんな機械か漠然と知っていましたが、裏シースルーバックなので、無理を言って中の機械を見せてもらいました。

ランゲ1は平ヒゲゼンマイでしたが、ダトグラフはブレゲ巻き上げヒゲゼンマイを採用しており、宝石のような感嘆する非常に美しいムーブメントでした。私がもしお金持ちなら、衝動買いをしてしまいそうな感動を覚えました。私が今まで見た中でダトグラフは一番キレイに仕上げた腕時計でした。

『ランゲ&ゾーネ社』は一つのモデルに一つのムーブメントを新しく製作する事を社是にしています。他のスイス高級時計のように、同じムーブメントを搭載して多数のモデルを作るという方針とは全く違っています。

『ランゲ&ゾーネ社』のムーブメント組立工程で特に目を見張るべき事は、全製品に対して二度組立という手間のかかる事を敢えてしている事です。二度組立とは、一度ムーブメントを組み立てて精度を限界にまでに絞り込み、そこでクロノメーター検査の倍の10姿勢で日差を徹底的に調整するのです。それが終わってから再度完全分解し、洗浄後、装飾仕上げを施して組立調整するという、入念な作業をしています(2回目に焼き入れ青ネジを使っています)。

最近、『ランゲ&ゾーネ社』は女性用Cal.L911.4を開発し、女性用・手巻き腕時計を売り出しました。「アーケード」と言うネーミングで、アウトサイズデイト表示を採用し、美しい機械式腕時計です(皮ベルト・18WGケースが125万円、18KYGケース・ブレスが220万円します)。女性の方で最近メカ式に目覚めた人は一見の値がある時計です。

帰りに取引先の並行輸入元を訪ねてみると、今流行の『フランク・ミューラー』のトゥールビヨンが置いてありました。見てみると平ヒゲゼンマイを採用していたので、正直びっくりしました。トゥールビヨンは姿勢差誤差を補正する機能なので、完全なまでに姿勢差を追求するには、当然巻き上げヒゲを採用するべきではないかと思った次第です。世界限定18本、フランク・ミューラー・サンセット、SSケース、ETA社系の自動巻ムーブを入れてプレミアム価格120万円には、本当に驚きました。それでもフランク・ミューラが日本で飛ぶように売れているそうですから、フランク・ミューラの魅力は摩訶不思議ですね。