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2007年01月22日

●続時計の小話・第16話(セイコーCal.8346A)

埼玉県のS市H様の修理ご依頼のセイコーマチック-R、Cal.8346A、 27石 、5振動 新品時メーカー精度等級C (日差-15~+25秒)1967年諏訪セイコー製は、
薄型の自動巻でロー・ビートですが、なかなかの良いムーブメントでこの度、よく見ることにより改めて感動いたしました。(5振動はゆったりテンプ振動しますので懐古調で温かい雰囲気を持った機械と言えます)

1965年製セイコー・マチック・ウィークデイター(Cal.8306)から派生的に誕生したのが Cal.8346A でした。このムーブメントは、小生は今まで何十回と数え切れない程、オーバーホール・修理調整してきた記憶があります。

セイコー社が作ったムーブメントなら、この位の仕上がりの時計は当然であるといつも考えていましたので、このキャリバーの時計を修理するにあたっては、極端な言い方かもしれませんが、なんらビックリする様な事は無かったのです。

しかし最近、オリエントが自信を持って世に送り出した、フラグシップ腕時計『ロイヤル・オリエント』に搭載されている、Cal.88700(静的精度-4~+6秒、28800振動)を良く観察してみると、どこかしら、Cal.8346Aと似ている雰囲気を持った機械であることがわかりました。(当然、8振動ですからテンプはせっかちな動きをしますが)

オリエント時計は、今ではセイコー・エプソングループに所属しているとも言える会社なので、オリエント時計の時計設計技術者が、かつての諏訪セイコーのムーブメントを参考にしたのではないか?と思われても仕方がないかも知れません。

ロイヤルオリエントが35万円前後する事を思えば、40年前のセイコーCal.8346A も再評価され、機械時計愛好家に近い将来人気が出てくるのではないのか?と伺いしれます。同時期に第二精工舎が製造した手巻Cal.45系が、既にアンティークの手巻き名機として位置づけられている事を思えば、ロー・ビートの代表的な名機として諏訪セイコー社製Cal.83系が、必ずや評価が高まっていくものと推察しております。

スイスの各時計メーカーは、ここ数年マニュファクチュール化する事にどこも目の色を変えて一生懸命なのですが、国産のセイコーや、オリエントは言わずと知れた完全マニュファクチュールの時計会社なので、今後、どしどし新しいムーブメントを開発してくるのではないかと思われます。