« 続時計の小話・第16話(セイコーCal.8346A) | | 続時計の小話・第18話(中国製腕時計) »
« 続時計の小話・第16話(セイコーCal.8346A) | | 続時計の小話・第18話(中国製腕時計) »
2007年01月22日

●続時計の小話・第17話(時計技術試験)

2003年度、弊店の時計技術通信講座卒業生、K君が、長野県の『信州・匠の2級時計修理士』の資格を取得した事は、快挙と言わざるをえません。

試験課題の要求精度は、日差+-10秒以内で、最大姿勢差が20秒というものでした。信州・匠の2級時計修理士試験を統括するT氏に今春お会いした時に聞いた事ですが、日差の精度を実測して判定するのではなく、歩度検定器でゼンマイ全巻きから、コハゼの爪を4~5個戻したほぼ全巻きの状態で精度を測定するとの事で、その点に関しては疑問に思われ今後、精度は実測にて判定して頂けたら、と思っております。

昭和45年に、小生は国家検定2級時計修理技能士試験を、近江時計学校で受験致しました。その時、滋賀県の時計店の息子達と一緒に、近江時計学校に在学していた、2年生終了間際の三十数名の生徒たちも一緒に受験しました。総数で50人ほどの人数が受験したのですが、合格したのは、10数名のみでした。生野工業高校時計計器科の入学生は延べ1920名にものぼり、3年間著名な時計師の教えと薫陶を受け、多くの卒業生が、CMW試験に挑戦しましたが、合格者は、29年間でわずか22名のみでした。

現在、日本に存在する時計学校は、『近江時計学校』、『ヒコみずの』、『東京ウオッチテクニカム』の3校がありますが、その学校の卒業生の方も修了証に留まるだけではなく、技術試験資格取得に向かってさらに時計技術の腕前を上げて頂きたいと願っています。技術資格試験に合格して、初めて社会的に技量が一人前と認められ、将棋の世界で言うと4段になったものと思います。

昭和41年度に我が国で初めて一級時計修理工競技試験が行われた時、この試験が将来に渡って継続する事を念頭において、試験内容を誰もが受験しやすくする為に、若干易しくしてありました。当時の日差の要求精度は-10~+20秒で、最大姿勢差も20秒以内でした。日差の測定は実測にて写真判定されていた、と聞き及んでおります。

信州・匠の2級時計修理士試験が、40年前の一級時計修理工とほぼ同等の内容であったのではないかと思われます。(天真入れ替え作業、ヒゲ合わせ作業、ヤスリ作業があったので若干、一級時計修理工競技試験の方が難しかったかもしれませんが)その事を思うとK君の努力は大変なものであったと思わざるを得ません。