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2007年01月22日

●続時計の小話・第18話(中国製腕時計)

日本ブランドのケンテックス社が、手巻きのトゥールビヨン腕時計を怒濤の価格、650,000円(10本)と、パワーリザーブ・カレンダー付きのタイプ、750,000円(25本)の2機種を発売しました。

このムーブメントは、中国製シーガル社Cal.TY801を搭載しています。ケースのサイドには、スイス高級腕時計ブレゲでおなじみのコインエッジが精密に施され、文字板には、ギョッシュ彫りが綺麗に施されていて、低価格にも関わらず、高級感漂う顔になっています。

スイス時計メーカーで良心的な価格で有名なエポス社のトゥールビヨンでさえも399万円もしますので、このケンテックス・トゥールビヨンが直ぐに完売したのも頷けます。

トゥールビヨンと言えば、超高額コンプリケーションの一つで、スイスの代表的な高級腕時計メーカーが、1000万円を超える価格で発売しています。日本でも東京を中心として高額所得者の方に、各ブランドのトゥールビヨンが年間数本づつ売れている、という事を弊店取引先の輸入業者から聞いた事があります。小生も大阪の取引先で、F社のトゥールビヨンを拝見させてもらいましたが、この時計が何故1000万円もするのか?不思議でたまりませんでした。

弊店でも、輸入商社(株)セベと取引をして、特価品として、中国製ムーブメントを搭載した、テクノス腕時計を販売しております。ビッグデイト、パワーリザーブ、ムーンフェイズ機能が付いた自動巻で19,000円、レギュレーター、24時針機能が付いた自動巻で19,000円という考えられない低価格です。

当然この低価格ですから、精度の面、地板の仕上げ、ガンギ車の表面研磨、各ネジの仕上げ、ヒゲの外端曲線、ヒゲ棒アガキ調整等はまだまだ十分とは言い難いのですが、今後5年10年と、中国の時計会社が技術力に磨きをかけて力をつければ、侮りがたい時計勢力になるのではないか?と危惧しております。

スイス各時計メーカーや、日本の時計メーカーは中国産時計はおそらく眼中に無く、全く敵愾心を持っているとは、思われませんが、エレクトロニクス産業や金床産業が、日本の技術に追いつき、追い越せるほどの力を付けてきた現在を見るにあたり、決して安穏とはしておられないのではないか?と思っています。

この中国産トゥールビヨンを近い内に、弊店も一個購入して分解してどの様な仕上げや造りをしているのか?詳しく調べてみたい、と思っています。ここまで、力をつけてきた中国時計メーカーなのですから、恐らく近い内に、メカ式の永久カレンダー、スプリットセコンドクロノグラフ、ニミッツリピーター、等を低価格で開発してくるに違い無い、と思っています。日本を代表するセイコー社もうかうかしていられないのではないでしょうか?