« 続時計の小話・第44話(近未来の漠とした不安) | | 続時計の小話・第46話(ラドー・ダイヤスター) »
« 続時計の小話・第44話(近未来の漠とした不安) | | 続時計の小話・第46話(ラドー・ダイヤスター) »
2007年01月22日

●続時計の小話・第45話(ドイツ時計メーカー)

ここ最近のドイツ産腕時計の躍進には、目を見張るものがあります。ドイツ産の時計と言えば、クロックが世界中の方に愛用されていたユングハンス、キンツレー社が特に有名です。

腕時計のドイツ産メーカーとしてはハンハルト、ソーティス、クロノスイス、ユンカース、等が最近よく知られているところですが、旧東ドイツのグラスヒュッテ地方に復活及び誕生した、ランゲアンドゾーネ、グラスヒュッテ・オリジナル、ミューレ・グラスヒュッテ、ノモス社が魅惑ある時計を作り続けていて人気を博しています。

特にグラスヒュッテ・オリジナルとランゲ・アンド・ゾーネが、ここ10年ほどで想像を絶する素晴らしい機械時計を作り続けてきた事に対して、驚嘆せざるを得ません。何故に10年間という僅かな期間の間に、スイス時計が成し遂げられなかった程の美しい複雑なムーブメントを次から次へと開発出来た原因が何なのか。また両社の時計技術の底力を見せつけられた思いが致します。

恐らく、冷戦時代の東ドイツのグラスヒュッテ地方の時計メーカーは、電子腕時計やクォーツ化に大きく立ち後れた事が、幸いになったものと思われます。共産国の労働者の方々に安価な機械式腕時計を長年に渡り作り続けてきたことが、メカ式時計の技術の蓄積となり、西ドイツに吸収される事により、新しい経営陣・資本を迎え入れる事によって、革新的な機械式時計への誕生へと導かれたのでしょう。

クォーツ化に立ち後れたことが、メカ式生産に必要な各種の工作機械・工具の保存・維持が上手く行き、破棄に到らずにすんだのではないかと不幸中の幸いだったと思われます。グラスヒュッテに住んでおられた時計技術者の方々は、安価な機械式腕時計を作り続けた事に安住する事なく、何時の日か世界中の人々に吃驚させるような、時計を開発したい、と強い願望を持ち続けた結果がこの開花に結びついたのでしょう。

ノモス社も当初はETAcal.7001のムーブメントを採用していましたが、今では独自の自動巻ムーブメントを開発したり、ほとんどのパーツ類を自社開発して、マニュファクチュール化を目指して邁進しています。ある情報筋から聞いたところによりますと、トゥールビヨンでさえプロトタイプが完成されており、近い将来、商品化を目指すほどの時計技術力を養成してきました。またミューレ・グラスヒュッテは独逸産らしい質実剛健のシンプルな飽きの来ない腕時計を開発して時計愛好家に喜ばれております。

かつては、スイス時計メーカーは日本の時計メーカー、セイコー、シチズンが最大のライバルであったでしょうが、現在スイス時計メーカーの最大のライバルはドイツ時計メーカーに代わってしまった、と断言してもいのではないか?と思います。日本の時計メーカー、セイコー、シチズン、オリエント社もドイツメーカーに負けない努力を今後ともして欲しいと願っております。