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2007年01月22日

●続時計の小話・第43話(時代の流れでしょうか)

最近、ある時計雑誌を見ていましたら、GSX社が毎秒12振動(43,200振動)の超ハイビートの腕時計を発売する、という記事が載っていました。ムーブメントの写真も拡大してあって、掲載されていましたのでよく眺めてみると、ローターの留め方、テンプ受けの緩急針の方式などがセイコー社のやりかたと全く同じ様な方法なので、まさか、セイコーインスツル(SII)が最近開発した、新型12振動ムーブメントではないのではないか?と、疑念が起こりました。

確認する為に、他の情報誌からセイコーの12振動ムーブメント(現在未発売)と比較してみると、地板の仕上げ等が異なる他は全く同一のものである、と思わざるを得ませんでした。

スワ、まさか模造品製造で有名なC国の時計会社がセイコー社の12振動ムーブメントをこんなにも早く模倣出来た事にC国の時計会社の時計技術のレベルがここまできたのか?と想像したり、産業スパイが暗躍してセイコーの、このハイレベルな技術をどうやって盗んだものか?、セイコーインスツルのトップ技術者がヘッドハンティングでC国の時計会社にスカウトされたのではないか?など色々想像したりしていました。

(エレクトロニクス産業においては、日本の優秀な技術者が韓国や中国の企業からヘッドハンティングされ、他国の電子企業に就職する事が日常茶飯事になっているとも、聞き及んでいます。時計業界においてもこの様な事がおきたのか?と思ったりしておりました。)

一応、確認の為にGSX社に確認の電話を入れて見ましたら、驚くなかれ、セイコー・インスツルからこの新ムーブメントの供給を受け、来春、価格未定の段階ですが、数百万円以上で売り出す、という驚いた話でした。

セイコー社や、シチズン社が過去に於いてキャラクターブランドやファッションブランドメーカーにクォーツムーブメントを供給して、腕時計を発売している事は、皆さん良くご存じだと思いますが、セイコーインスツルの技術者が苦心惨憺して新開発した、超ハイビートの新ムーブメントを、同じ時計業界の会社にこのムーブメントをいち早く供給する事に、驚かざるを得ませんでした。セイコ-経営陣の今までにない大胆な意識改革・発想の転換があったのではないか?と思います。

そう言えば、電波腕時計の開発にあたって、友好関係にあったドイツのユングハンスにセイコー社が、高級メカ式ムーブメントを供給する事実にも驚かされました。今秋、発売されるユングハンス1861クロノスコープには、セイコークレドールのクロノグラフムーブメント6S系が採用されるものと思われ、同じく今秋発売されるユングハンス1861オートマチックには、メカ式GSのムーブメント9S系が採用されるものと思われ、この事実にも大いに驚かされました。過去のセイコー社からは想像だに出来得ない事でした。