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2007年01月22日

●続時計の小話・第42話(スイスの弱点と強み)

スイスの国は、九州ほどの面積の中に約700万人の国民が住んでおり、永世中立国として平和な国家を築いて今なを繁栄しています。周りに強国に挟まれていながら高い所得水準を維持し、繁栄をしているのには、並々ならぬスイス人の国を自らの手で守るという気迫ある誇りと勤勉さと質の高い教育水準の顕れだと思います。

精密加工技術産業にも100年にも渡り世界をリードし続けられたのも、技術・技能の伝承が親から子へ、子から孫へと自然の流れの中に上手く行ったからに他ありません。

スイスは、天然資源にも恵まれず、他国から見れば羨望されるような資源を持った国ではなく、強いて言えば観光産業にのみ一歩秀でた美しい自然があったと、言えるでしょうか?

そんな国が、時計産業を今日まで継続して繁栄させてきた事に驚嘆をせざるを得ません。スイスの弱点と言えば、日本と同じ様に少子高齢化で労働人口が次第に年老いていっている事でしょう。日本の人口が一億人以上を数える事を思えば、スイスの人口の少子高齢化問題は、日本以上に大変な国家的悩みと言わざるをえません。

日本の国は精密加工技術のみならず、エレクトロニクス産業や、鉄鋼・造船にわたる重工業、自動車及び機械・化学工業と大変裾野の広い熟成された世界的競争力のある産業構造になっているのが日本の底力であり、スイスとは全く比較にならない国家の経済力を持っていると言えます。(スイスがクォーツで後塵をはいしたのはエレクトロニクス産業が当時、日本よりも遅れていたためでしょうか。)

いくらスイス人が我慢強く器用で、勤勉で労働力の質が高いと言えども労働力の絶対数が少なく、日本人の一億を超す几帳面で勤勉な国民が日本の時計産業を発展させようと本気になっていろんな対策をやれば、日本の時計産業はスイスの時計産業と言えども凌駕出来るのではないかと思われます。

日本の勤労者で辛抱強い性格で、几帳面で細かい作業に適した人材が7万人いるとして、その比率からいけば、スイスの国の中にはそういった人々が 4,900人しかいない事になります。そういう事を思えば人口が少ないという事はスイスの国にとって最大の弱点と言えると思います。

日本の時計産業が、新製品の腕時計を開発してもすぐさま自国の消費者に販売出来、その反応をすぐ読みとる事が出来ますが、スイスの国の時計産業の人々は、海外の国に売りさばいてその反応を見るという、時間とコストの面で不利な状況に置かれていると思います。

それにもかかわらず今日、スイスの時計が世界中の時計ファンに歓迎されて賞賛されているのには、スイスの時計産業に携わる人々の伝統を守ろうとする想像を絶する努力の賜物ではないか、と思います。