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2007年01月22日

●続時計の小話・第37話(姿勢差の調整方法)

日差の歩度調整方法としては、一般的に緩急針(F/S)を動かす事により調整するのが普通ですが、その他に、いろんな方法があります。

ヒゲ受け、ヒゲ棒の間のヒゲゼンマイのアガキの量を微調整したり、大幅に日差が狂う場合はヒゲゼンマイ自体の長さを調整したりする事もあります。またチラネジ付きテンプの場合は、チラ座を入れて重量を変えて調整する方法もあります。微細調整方法としては、ミーンタイムスクリューやマイクロステラ等で調整する事が普通であります。

古いアンティークの時計のオーバーホールをする場合、姿勢差が顕著に出た場合は、ヒゲゼンマイを外してテンワを片重り器で見てテンワの片重りがあるかないか?を見なければなりません。ヒゲゼンマイを外端、内端を理想曲線に近づけて、ヒゲの縦フレ、横フレを修正して、これで姿勢差が出ないだろうと、確信してもいざ機械に全てを組み込んで、歩度検定器で姿勢差を計ってみると往々して大きな姿勢差が出る場合がアンティークにはあります。

その場合は、ゼンマイをわずか角穴車で1~2回転ほど巻いて、テンプの垂直姿勢の振り角を160度~180度(短弧)にします。そして、リューズ下 (PD)、リューズ上(PU)、リューズ左(PL)、リューズ右(PR)の4姿勢の歩度を測量して、最大進みの姿勢差がどの位置にあるか?を捜します。

PDで、最大姿勢差があった場合では、竜頭下の位置にある時の静止した状態のテンプの下側リムをほんのわずかに錐で削って調整します。姿勢差を見つける為にテンプの垂直姿勢の振り角を160度~180度にした理由は、テンプの片重りが振り角220度を境として、逆に出てくるからで、歩度の差が顕著にあらわれるテンプ低振り角で見つける作業をする方が良いと思われるからです。

片重りが垂直姿勢の下側にある時には、テンプ振り角220度以下の場合は進み、テンプ振り角220度(長弧)以上の場合は逆に遅れるという結果になります。

ここ2~30年程前に生産された有名ブランドのテンワの片重りはメーカーの段階で殆ど完璧に取り除いていますので、それでも大きく姿勢差が出た場合はヒゲゼンマイの調整が上手くいっていないためと思われます。ヒゲゼンマイの収縮運動が出来うる限り同心円上に収縮するようにすれば姿勢差は少なくなるものと思います。