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2007年01月22日

●続時計の小話・第36話(オールド時計を分解する時の点検事項)

アンティーク腕時計や、30~40年以上前の古い腕時計をオーバーホールでお預かりした時計を分解する時に、ゼンマイを半巻き程度リューズで巻き上げて、テンプ振り角が180度前後あれば作業工程は順調に進んで悩む事もさほどありませんが、ゼンマイを巻いても全くテンプが動かない場合は分解する時に、いろんな点に注意し、点検しながらバラさなければなりません。

1.外部からの点検事項として、ケースに大きなキズがあるかないか?
(ある場合は停止の原因が落下・衝撃等の為と思われます)
ガラス縁・ベゼル、裏蓋等になんらかの異常はないか?
ゼンマイの巻き上げ具合は抵抗無くスムーズにいくかどうか?
リューズの引き出し具合は良好か?(抜け落ちたりしないかどうか)
針回し具合が重かったり、軽かったり、ゴリついたり、置回りがしていないかどうか?
時針・分針・秒針がお互いに接触していたり、ガラス内面にに擦れていないかどうか?
確認しなければなりません。

2.裏蓋を外して埃やゴミが入っていないかどうか?
各ホゾの油の状態はどのような感じであるか?
テンプが止まっている場合は脱進機がどんな状態で止まっているか?
テンプとアンクルを外してザワ回りがスムーズにいくかどうか?
平振り、立振りを見てどの程度のテンプの振り落ちがあるか確認しなければなりません。

3.ケースからムーブメントを取り出す。
文字板がゆるんでいないか?ネジが脱落していないかどうか?
針が中心から偏心せずに文字板中央に収まっているか否か?
テンプ、アンクルのアガキ量は適切であるかどうか?
テンプがアンクル受けに擦れていないかどうか?
ヒゲがもつれていて、2番車やテンプのアミダに接触していないかどうか?
ヒゲ持ちネジが緩んで、ヒゲ持ちがテンプのアミダに触れていないか?
ヒゲ受けがテンプのアミダに触れていないかどうか?
ヒゲが極端に偏心してコイルどうしが触れあっていないかどうか?
ヒゲの2番目のコイルがヒゲ棒に接触していないか?
ヒゲの中心が充分に良くとっているかどうか?
テンプが片振りしているかどうか?
振り角がゼンマイ一杯巻いてどの程度あるかどうか見なければなりません。

4.テンプ受けを外して、天真の上下ホゾが曲がっていないか?確認し、
ホゾの形状が良いかどうかを見ます。
天真のホゾにキズが付いていたりしていないかどうかも見なければなりません。
アンティーク時計等によく見られる事ですが、振り座が緩んでいないか?
小ツバの角にキズがないか?
振り石がしっかり止まっているか?
振り石の周りにラックが付きすぎていないか?
振り石の面が欠けていたり、大きなキズがあるかどうか?
また汚れていないかどうか?を確認しなければなりません。

5.アンクルを外す前にゼンマイを完全にほどいて、以下の点検をします。
アンクルがアンクル受けに接触していないか?
アンクルのアガキは適量があるか?
アンクル真に曲がりや異常があるかないか?
アンクル体が正常か?
アンクルの出爪・入爪が欠けていたり異常がないか?
くわ形や剣先に異常があるかないか?を調べなければなりません。

6.歯車のザラ回しの点検
コハゼ爪を5~6個送ってゼンマイを巻いて、輪列車がスムーズに回転するかどうか
確認します。
回転しない時は、どの車まで力が来ているのかを見て、ザラ回しが止まる原因の車を
見つけなければなりません。
各輪列車のアガキ量が適量にあるかを点検し、特に2番車のアガキが適切にあるか
どうか見ます。
ザラ回しを逆転して、受けにルビー石を使っていないホゾ穴の摩耗状況を
見なければなりません。
分解後は特に、カナに摩耗や傷、錆があるかどうかを各車について充分に点検します。

7.裏歯車系の点検では日の裏車・小鉄車・筒カナ等の噛み合い状態を見ます。
特に長年に渡って分解掃除をしていない腕時計の場合、日の裏車の受けや心棒が
摩耗してガタが大きくなり、針合わせが出来ない場合もありますので、
よく見なければなりません。
無理して回して歯こぼれしている場合もあるので注意が必要になります。

8.角穴車を外して、香箱真のアガキとガタの状態を見ます。
香箱に対して、香箱真のアガキは適量であるか?
香箱真の状態が良いかどうか、摩耗しているかしていないかを見ます。
ゼンマイの状態が良いかどうか?
香箱内の汚れ具合を見ます。
香箱は時計の性能に重大な影響を与えますから、香箱は充分に点検する必要があります。

9.地板の点検ではホゾ穴の穴石が亀裂していたり、欠けていたりしていないかを
各穴石を点検しなければなりません。
各歯車の受け石は耐震バネを外して綺麗に手洗いしてから、超音波洗浄機に
かけなければなりません。

上記のように、アンティーク腕時計や動かない古い腕時計の分解掃除をする時は、点検事項が一杯あります。難物時計や古い時計の修理には時間と神経を使うので、疲れる作業だと思わざるをえません。