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2007年01月22日

●続時計の小話・第32話(グラスヒュッテ・オリジナル社)

ドイツで産声をあげた時計メーカーに、ランゲ・アンド・ゾーネ、グラスヒュッテ・オリジナル、ノモス、ハンハルト、クロノスイス、ジン等の個性的な時計メーカーがいろいろあります。ノモスとハンハルトは弊店では取り扱っているのですが、小生の店でも将来取り扱ってみたい、と思っている時計メーカーがグラスヒュッテ・オリジナルです。

ランゲ・アンド・ゾーネと共にグラスヒュッテ・オリジナルは、東西の横綱の地位に占めるドイツ時計メーカーと断言しても差し支えない、と思います。社員数300人弱のマニュファクチュールの時計メーカーがこれほどまでに優れた時計を作り出せるのもドイツ時計産業の伝統の重みを感じざるを得ません。

ランゲ・アンド・ゾーネは、日本価格でどれも250万円以上する高級腕時計ですので、どなたでも簡単に購入出来る、という時計ではありません。しかし、グラスヒュッテ・オリジナルは、SSケースで70万~90万円台で購入出来る腕時計があるので、3~5年がかりの購入プランを立てて少し辛抱すれば、入手出来る価格の時計だと思います。

グラスヒュッテ・オリジナルのCal.90を搭載したパノマティック・デイトは、SSケースで100万円を切る997,500円で販売されています。一流の時計職人が丹精を込めて作り上げた、この美しい機械の時計が100万円以下で発売されている事には驚きを隠せません。こういう価格設定が出来たのも、グラスヒュッテ・オリジナル社が世界でもっとも良心的な時計会社と言える、スウォッチ・グループに属しているから出来たに違いないと思います。
(余りにも時計の価値以上の価格設定をする日本のある輸入元会社は見習ってもらいたいと思っています)

このCal.90の特徴は、ローターを地板中心に置かずに偏心させた事により、テンプの動きがローターに隠れる事なく、いつもユーザーに眺められるという、うれしい持ち味になっています。ローターはハーフスケルトンタイプになっていて、ローター外端部には、比重の重い、K21金を使用して自動巻き上げ効率を高めています。

地板にはグラスヒュッテ伝統の筋目加工とベルラージュがしてあり美しい光芒を放っています。勿論青ネジを採用してあり、何処から見ても美しいと感嘆せざるを得ません。

また、一番特徴なのがダブル・スワンネックという緩急調整装置を持っている事です。左側のスワンネックのネジでは、ヒゲ持ちが微細調整出来、右側のスワンネック・ネジではヒゲ受けを動かす事により、緩急調整が出来るという時計職人にとってはありがたい調整装置になっている事です。

現在では、ほとんどのムーブメントは、可動ヒゲ持ち装置を装備していますが、可動ヒゲ持ち装置のついていないアンティーク腕時計の場合、片振り調整をする時はヒゲ玉の割れ目にドライバー状の工具を差し込んで、目分量で調整をしては何回も繰り返して片振り調整を修正していました。

可動ヒゲ持ち装置の場合、そういうわずらわしさが無くなったのですが、それでもある程度は目分量で測からざるを得なかったのですが、グラスヒュッテ・オリジナル社のダブル・スワンネックでは、完璧に片振り調整が出来る、という装置になっています。

テンワには、比重の重いK18金を採用していて、チラネジ式テンプでありながら慣性モーメントを高めて、歩度の安定をはかっているという高度な技術を駆使しています。こういう細部に渡りドイツ人気質らしいコダワリを持った時計が日本で100万円以下で購入出来る事は大きな魅力である、と思っています。

グラスヒュッテ・オリジナル社の代表的なキャリバーに、手巻きのCal.42 Cal.65があり、自動巻にCal.39がありますが、これらもCal.90に勝るとも劣らない美しい仕上げで製作されています。将来、世界中でグラスヒュッテ・オリジナル腕時計はロレックスと共に大きな人気を博して行くに違いないと思っております。