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2007年01月22日

●続時計の小話・第30話(うれしい電話)

弊店の2004年度、時計技術通信講座卒業生のH君より電話連絡が入りまして彼が時計サービスセンターに就職する事が出来たとの事でした。彼は関西の有名私大卒のIT技術に長けた人でその道のプロと言えるほどの能力を持っている青年なので時計修理技術修得の応募には趣味の範囲であろうと思っていたのですが、その連絡には吃驚したと同時に嬉しくもありました。

彼は繊細で、礼儀正しくて良家育ちの優秀な青年であるので努力次第では相当伸びる逸材だと確信しています。きっと先輩の時計師の方達から可愛がられて技術の伝承を授けられると思っています。それにしても思い切った人生の職業選択をしたと思う反面、能力のある青年がこの業界に足を入れてきたことが大いにこの業界にとってはプラスになり財産になると思った次第です。

職人の世界はいずれもそうなのですが、時計技術も負けず劣らず奥域が大変深くて一度足を踏み入れたなら余程覚悟を持って勉強・研鑽に励まなくては到底一人前の技術者には成れないのでH君には今後一生懸命に頑張って貰いたいと思っております。

5年間、24名の生徒を教えてきたわけですが、やっと苦労が報われて、良い人材がこの業界に入ってきたことが嬉しくてたまりません。挫けることなく頂点を目指して技術習得に励んで欲しいと思っています。(神戸市の秀才のH君もアンティーク・ウォッチ店を開業しています)

同じ時計技術通信講座卒業生の優秀なK君は昨年、「信州・匠の2級時計修理士」に合格したので今年は、更に踏ん張って1級を受験するとのメールがありました。2003年度、卒業生のK君も、まさしく逸材でこの業界で一日も早く充分飯が食える状態になって欲しいと願っています。

今まで教えてきた24名の生徒の中にも、もう一歩頑張ればこの業界に将来、身を置くことが出来るのではないかと思われる生徒が数人いましたので今後も鋭意精進して欲しいと願って止みません。

人に技術を教える事は大変な事で講座日の明くる日の疲労は頂点に達し、仕事が全く手につきません。その事を思いますと多くの弟子を育ててこられました角野常三先生、行方二郎先生、加藤日出男先生、飯田茂先生、菅波錦平先生、小野茂先生のご苦労が忍ばれます。

30~40年程前の有名な時計師の諸先生は骨身と命を削って後進の育成・指導にあたられたことがこの頃つくづく思い知らされます。お側にも寄れない崇高な先生が沢山おられた事がこの業界をしっかり支えてきたのだと思います。