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2007年01月21日

●第207話(オメガ30mmキャリバー)

最近、時折『30mm OMEGA』と言われる腕時計の修理が弊店に舞い込むようになりました。『30mm OMEGA』はオメガ社が製造してきた手巻きの優れた名機です。

Cal.は30.260.267.268.269.284.285.286の、おおよそ8種類の手巻きムーブメントがあります。全て振動数は 18,000です。その中で平ヒゲ搭載の最高峰はCal.269で、ブレゲ巻き上げヒゲ搭載の最高峰はCal.268、Cal.284、Cal.286でしょう。

『30mm OMEGA』は1939年から製造開始で、1963年にCal.269を製造してその歴史にピリオドを打っています。ムーブメントの直径を30mmにオメガ社が限定したのは、当時の天文台腕時計クロノメーター部門の出品規格が直径30mmに等しいか、あるいはそれ以下と決められていたからなのです。よってオメガ社はサイズの限界の直径30mmのムーブメントを開発し、天文台腕時計クロノメータ競争に出品したり、また、その合格品を市販したからなのです(当時のオメガ社は精度競争ではダントツで世界一でライバルのロンジン、ゼニス社に大きく差を広げていました)。

これらの30mmオメガのムーブメントを搭載した腕時計(シーマスター、レールマスター、ランチェロ)は日本のアンティーク・ショップで30万以上の高値をつけて売買されています。日本ではこれほどまでに価格が高騰したにもかかわらず、ebeyオークションで上手く入札すれば3~4万円で落札できます(良心的なアンティーク・ショップもありますが、相対的に日本のアンティーク腕時計の価格はかなり高いような気がします)。実際弊店に修理依頼されたお客様も、そのような低価格で落札して、弊店に持ってこられたり送られてきたりしました。

地板等、全て赤色金メッキされ、対錆にも考慮したしっかりした造り映えです。各パーツ、ネジ等も一寸の隙もなく製造されていて、その出来映えに感嘆の言葉が出るほど美しい機械です。この時計は製造されてから40年以上経過しているにもかかわらず、部品の消耗摩耗がほとんど見受けられず、ヒゲ玉に取り付けてあるヒゲゼンマイのピンニングポイントからの最初の半円部分が、リューズ下の位置で上部にくる様に設計されている為に、時間の精度が理想的なやや進み具合になるように、設計されていました。

普通はヒゲ棒は1本のみなのですが、Ω30mmキャリバーはヒゲ棒がヒゲ受けの中に2本あり、その間でヒゲゼンマイは両アタリで微かな当たりの動きをしていました。
Cal.269からは精密工作機械の加工精度の向上によりドテピンが廃止され、アンクル受の内面部分の隙間がドテピンの代用をするようになりました。時計愛好者と自負するお方なら、19セイコー、GS(Cal.45)、ロレックス(Cal.1570、Cal.1225)、と共にOMEGA(30mmキャリバー)を持っても絶対損はしない名機の時計でしょう。