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2007年01月22日

●続時計の小話・第23話(フィルムカメラとメカ式時計)

最近のニュースによりますと、フィルムカメラの国内販売台数が毎年落ち込んでいき、今では、出荷台数全体の3.5%まできたそうです。フィルムカメラの存続の危機にまで来たようです。それに比べ、デジタルカメラは性能の向上と共に、製品価格がとても安価なお買い得になっていき、年間844万個まで増えてきたそうです。

時計業界も1970年から1980年代にかけて、メカ式からクォーツへの大転換が行われ、アフターサービスがクォーツにはほとんど必要が無いため、異業種の商店にもクォーツ腕時計が販売されるようになり、時計店が苦境に立たされていったのは、承知の事と思います。

フィルムカメラからデジタルカメラへの大幅な転換により、町のカメラ店も今後ますます苦境に立たされるのではないか?と思います。クォーツも想像だにしなかった大幅なコストダウンが出来たようにデジタルカメラも今後、値崩れがしていくのではないかと危惧しています。家電量販店にカメラの顧客を将来ほとんど取られてしまうのではないかと思っています。

超優良企業の富士写真フィルムも、カラーフィルムや印画紙等の写真感光材料の売り上げが落ち込み、大勢の人員を削減する、という事です。あのニコンですら、フィルムカメラ事業を大幅に縮小して、フィルム用コンパクトカメラの生産も全面的に中止するようです。

プロのカメラマンから圧倒的な支持を受けているニコン一眼レフカメラも主力の2機種を除いて生産を中止に追いやられてしまいました。歴史のあるカメラ会社である、コニカミノルタでは、写真フィルム事業から全面的に撤退して、デジタル一眼レフカメラ事業でさえ、ソニーに譲渡するそうです。

カメラ事業と言えば、レンズ研磨等の光学加工技術に優れていなければ勝ち残っていく事が出来なかったのですが、デジタルカメラになりますと、主要部品がCCD等の半導体生産技術に優れている家電メーカーが今後ますます優位に立っていくような気がします。

カメラ事業の根幹を成す光学品加工技術をぜひ未来永劫に渡って伝承する為にも、フィルムカメラ事業は残していってほしいと思わざるをえません。 1990年代からのメカ式時計の見事な復活を見るにあたり、世界をリードしてきた日本のカメラ会社もデジタルカメラ一辺倒ではなく、アナログのフィルムカメラの存続をぜひ考えていって欲しいと思います。

クォーツ腕時計はメカ式とは比肩出来ないくらい正確無比な腕時計ですが、現在ではユーザーの方にそれのみでは充分な満足感を与えられず、メカ式の心温まる美しいムーブメントに魅了されたユーザーの方が徐々に増えてきているのが、今日の時計業界の姿です。

デジタルカメラは操作しやすく、鮮明度では敵なしの状態ですが、フィルムカメラで映し出される陰影のある深みのある写真には一歩及ばないのではないか?と私は思っています。昔懐かしい光景の、現像液に感光印画紙を入れて徐々に美しい映像が浮かび上がってくるあの心のドキドキとした時めきはカメラを一度弄った人には忘れられない感動ではないでしょうか。フィルムカメラにもメカ式腕時計のような復活が将来あるのではないかと
思うのですがどうでしょうか。