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2007年01月21日

●第170話(もう一方の20~30万円台の名機)

ROLEX Cal.3135の双璧になる名機と言えば、ジャガールクルトのCal.889でしょうか(もちろん異論もあるでしょうが)。このムーブメントはジャガールクルトの二大シリーズ『レベルソ』と『マスターコントロール』のうち後者の時計に入っています。

この日付表示付き自動巻ムーブメントはローターの下辺部に比重の高いK21金を使っており、巻き上げ効率を高めています。石総数は36石で 28,800振動のハイビート、部品総数202。厚さ3.25mmで、1982年に自社開発されました(セイコーと比較して部品数がかなり多いのが難点と言えば難点でしょうか?部品数が多いと言うことは相対的に故障も多いと言うことになるかもしれません。個人的にはジャガールクルト Cal.889よりROLEX Cal.3135の方が好きですが)。ROLEXより、かなり薄型に仕上げてあります。そのためにどちらかというと繊細なムーブメントと言えるかもしれません。しかし、高等技術者にかかれば相当な精度が出る機械です。

このムーブメントを搭載した『マスターシリーズ』は、1,000時間(6週間)にのぼる各種精度テストが行われています(6姿勢差における精度テスト・異なる温度における精度テスト・回転と停止を繰り返す精度テスト・衝撃性テスト・5気圧防水テスト・耐磁テスト等々)。COSCのクロノメーター検定が15日間(約2週間)である事を比較すれば、いかに長期間にわたって、いろんなテストが行われているか想像できると思います。

公的クロノメーター検定はムーブメント単体のみの検査ですが、ジャガールクルトの精度テストはムーブメントをケースに組み込んだ完成品の状態での試験なので、より信頼がおける精度テストだと思います。いかにジャガールクルト社がこの機械に自信を持っているかお解りいただけると思います。

ジャガールクルトはROLEXと共にマニュファクチュールですが、ただ1点違うことは、高級時計メーカーにもムーブメントを多数、供給しているために、自社生産しているムーブメントの種類がROLEXよりもかなり多い、という事です。

Cal.889はもちろん名機なのですが、ジャガールクルトの製造している他の高級ムーブメントもどれをとっても全て最高ランクの名機であると断言しても間違いありません。ただ価格の面で、Cal.889を搭載した『マスターシリーズ』はちょっと背伸びをすれば、30万円台で手に届く商品であるという事です。すごい実力がありながら日本でROLEXのような人気がないのが寂しい気がします(マーケティングが下手なのかなー。それともわかってもらえる人のみに買ってもらえればいいという哲学でしょうか?)。

かっての旧オメガ社はジャガールクルト社に勝るとも劣らない実力を持った時計会社でした(ジャガールクルトのCal.889に負けない機械が旧オメガ社には多々ありました。それがΩ自動巻キャリバー561,564,565です。これはほとんど同じ姉妹キャリバーです)。