« 続時計の小話・第131話(フレデリック・コンスタント社の動向) | | 続時計の小話・第133話(ジャガールクルトのムーブメント) »
2021年06月15日

●続時計の小話・第132話(天才時計師ピエール・ル・ロワ)

ピエール・ル・ロワと言う時計師をご存知の方は、そう多くないと思います。知っている方がおられましたら、かなりの時計通と言えるのではないでしょうか。

ピエール・ル・ロワ(Pierre Le Roy)は1717年にフランスで生まれた時計師です。デテント式脱進機を彼が発明したお蔭で船舶マリン・クロノメーターの精度が飛躍的に向上したのです。その為に船舶の位置(経度)を正確に知ることが出来るようになり遭難、難破事故が減少したと言われています。(正確なマリン・クロノメーターを開発・製作した為に彼は報奨金を得ています)

当時、帆船で海洋に打って出ていくことは、その時代の最先端の技術(航海術もその一つ)を習得した者しか出来えない事だったのです。現代で言うIT技術に長けた者と言えるのではないかと思われます。

『ル・ロワ』と名撃った腕時計は現在でも世界で販売されていますが、日本では正規輸入代理店が無く日本未登場になっています。邦貨で換算すれば普通200~400万円前後する高級時計ですので、なかなか取り扱う会社が名乗り上げないのかも知れません。高級時計の割には知名度が弱いのも難点かも知れません。

ピエール・ル・ロワと言えば、ルロワの名を世界中に知らしめた要因の一つに『ルロワ01』という超複雑時計の存在が知られています。世界の超3大複雑時計と言われています。

アントニオ・アウグスト・カルバリヨ・モンテイロがフランスの時計メーカーのルロワ一家に製作を依頼したのは1897年でした。パーツ総数は975個で4年という時間をかけて製作されました。機能としては年、月、日、曜日、春分、秋分、夏至、冬至表示、世界1265都市のローカルタタイム等、がありました。

『ルロワ01』は注文したモンテイロの死後、ルロワ一族に買い取られ現在はルロワ家があるフランス・ブサンソン、時計博物館に展示されています。サザビーズ・オークションなどに出品したら、ゆうに15億円以上の値段が付くと思われる価値ある時計です。渡仏する機会がありましたら一見に値する時計です。