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2009年11月27日

●続時計の小話・第103話(苦難な時代に)

先日、来店された国産大手時計メーカーの営業マンのお話によると、名古屋支店が管轄している中部地区7県で取引先の時計小売店が約1200店あるそうです。(そんなに時計店があるように思われるかも知れませんが1,800万人が中部地方におられるわけですから15,000人に一軒の時計店しかない事になります。40年程前は5,000人に1軒の時計店が成り立つと言われておりました。)

1200店の内、年間取引金額が0円の店が約200店舗もあるそうです。また年間取引金額0円~50,000円未満の店が200店舗、年間取引金額50,000円~200,000円未満の店が300店舗あり、残りの500店舗が年間取引金額200,000円以上との事でした。

昨年の米国発信のサブプライム住宅ローン原因の恐慌により、世界金融不安が発生し、世界同時不景気に突入した昨秋以来、国産時計メーカーの営業マンのお話では、全国で時計小売店の閉店・廃業・破産がすこぶる頻繁に起きているそうです。小生の店がある、白山市の商店街の老舗の時計店も昨年12月、都合により閉店されました。

時計小売店に限らず、地方の商店街にある小売店舗は今後益々、苦境に立たされ、閉店への瀬戸際に立たされていくのではないか、という危惧を各業界の小売店主は皆が持っていると思います。年間、20万円以上の取引がある時計小売店は、今後生き残れる可能性が少しはあると思って国産時計メーカーは、新製品の情報等を発信し連絡しているそうです。

しかし年間取引額20万円と言えば、月にすれば2万円弱になり、メーカーから存続すると見られていても中部地方に限らず全国の時計小売店はほとんど家族経営の零細店と言わざるをえませんし絶えず苦況に立たされていると言っても過言ではありません。

小生が時計通信教育講座を数年に渡りしてきたのも、時計技術を習得して、時計職人として一本立ちしてもらい、小さいながらも店を構えて欲しい、という希望があったからに他なりません。若い人達が時計業界に入って来なければこの業界は衰退あるのみで活性化は見込めないものになってしまうと思ったからです。

しかし、この様な時計メーカーから情報をもらうにつれ、これからの未来ある若い人達が時計店を経営したい、という事は至難な事となっている事実に思い知らされました。

小生は地方の街の時計店の息子として生まれましたが次男でしたので、将来は自分の店を小さいながらも持ちたいという強い願望を若い頃から持っていて、サラリーマン時代から開店資金を貯めてきました。そして約10年かかって開店資金を作り33才の時に10坪の小さい店を持ちました。それから約30年間が過ぎましたが紆余曲折の困難が幾度と無く訪れましたが、歯を食いしばって店を継続させてきました。

頑張れば夢を実現できるという良い時代に幸いにも生きられたからかも知れません。

それに引き替え現在の少なくない若人達は人材派遣業に登録し、派遣社員又は期間工として働かざるを得ないという不安定な雇用条件の下に曝されています。現代では非正規労働者の方々が年々増え続け30%を占める事実にも驚かされます。
(若い20代の青年達の50%が非正規労働者と聞いて唖然としてしまいました。日本の今までの政府・行政は何をしているのか怒りさえ覚えます。少子高齢化が叫ばれていますが人生設計に目処が立たない若い非正規労働者の人達が結婚をし家庭を作り子供をもうけることなど不可能に近いと言えます)

派遣の自由化を標榜し雇用の調整弁として機能させてきた「労働者派遣法改正・1996~2004」を徹底的に見直し、若い人達が将来に夢が描ける社会・派遣法に改善修正するべきではないかと思います。新しく政権を担っている民主党の政治家の人や経団連の人々は景気回復・経済発展・会社成長を第一目標に考えるも大いに結構なことですが労働者派遣法も一から見直し、雇用の継続を最重要課題として、またそれが出来ないのなら欧米諸国が構築している痛みを分かち合えるセーフティネット社会を早急に作らなければならないと思います。

人間にとって「時・時間」は何物にも変えられない貴重なものなのです。人々が心の豊かな「時・時間」を夢と共に共有出来る社会が実現できるよう政治家・政府・経団連・行政の人は汗を必死にかきながら深く突っ込んで考えて行動して欲しいと願っています。