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2009年08月24日

●続時計の小話・第101話(ETA社代替えムーブメント製造会社)

スイス時計業界の死活問題とも言える、ETA2010年問題が間近に迫ろうとしています。

(ETA2010年問題とは、2011年からスウォッチグループのムーブメント供給会社・ETA社がスウォッチグループ以外の時計会社にムーブメントのエボーシュ・パーツを供給しない、という事です。)

スイス時計業界の大変革をもたらすであろうETA2010年問題に,社運をかけて大きく発展させようと意気こんでいる、ETA社代替えムーブメント製作会社に2社『セリタ社』と『テクノタイム社』があります。(セイコー・インスツル社もビッグビジネスチャンスにETA社Cal.2892A2代替えムーブメントCal.4Lを既に開発しています。)

ロレックス社や、ジャガールクルト社の様な完全マニュファクチュール社では全く影響がないのですが、ETA社からムーブメント・パーツを仕入れて自社製品を生産している、スイスの圧倒的大多数の時計メーカーにとっては生き残りをかけて大きな選択をしなければなりません。

自社で新規にオリジナル・ムーブメントを開発するか(大量の資金が必要)、あるいは新たに『セリタ社』『テクノタイム社』からムーブメントを仕入れて生産するか、あるいはETA社から完成ムーブメントを仕入れて生産し、販売価格を以前よりも高く設定せざるをえない道を選ぶのか、選択肢の決断を迫られています。

巨大なETA社に立ち向かって、ここ4,5年大成長を遂げている、ETA社代替えムーブメント製作会社セリタ社が注目されています。既に特許が切れた為に、ETA・Cal.2824には、セリタ・SW200を開発し、ETA・Cal.2892A2には、セリタ・SW300を開発し、ETA・Cal.2836には、セリタ・SW220、ETA・Cal.2834には、セリタ・SW240、レディス用ETA社ムーブメントには、セリタ・SW100を既に開発して、有名スイス時計メーカーに逐次納入しています。

その勢いはスイス機械式ムーブメントの30%を占める勢いだそうです。今後更に伸びていくものと思われます。(何故ならムーブ開発費用が余りかかっていないセリタ社のムーブはETA社ムーブメントよりも安いであろうと思われるからです。同価格程度ならETA社ムーブメントを選択するに決まっているからです)

2,3年前、スイス機械式腕時計が、爆発的に世界中で売れた時、日本の輸入代理店Y社から人気のあるスイス時計O社の時計が弊店でもなかなか入手しづらい時期がありました。恐らく、ETA社からのエボーシュの仕入れが順調に運ばなかった為に生産が遅れ、遅れになったのではないか、との情報をY社から貰っておりました。

最近では、O社の腕時計のムーブメントにはセリタ社のムーブメントが一部採用される様になり、O社の腕時計も日本では容易く入手出来る様になりました。ユーザーの方にとっては朗報ですが、ETA社ムーブメント内蔵でないO社の腕時計を購入されるのを躊躇っておられる方がおられるかもしれません。次回にはセリタ社についてお話をしたいと思っております。