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2008年08月24日

●続時計の小話・第89話(熾烈なパイの奪い合い)

ロンジンをお買上げ下さった方より、今秋発売される世界限定500本、『ロンジン・レジェンドマリーナ復刻版、自動巻クロノSS』税込み定価\309,750の、問い合わせが最近頻繁に来るようになりました。

先日、ロンジン事業部のS部長が弊店に来店されましたので、ロンジン・レジェンドマリーナが、日本にまた弊店にいつ頃入荷してくるのか?と尋ねてみました。従来なら、世界限定500本ですと、日本割り当て本数は、最低でも100本は入ってくるのが普通ですが、今回のレジェンドマリーナの場合、日本には、数本しか入荷してこないそうで、それも既に予約完了済みとの事でした。

その数本全ては、大手百貨店の時計売場に納入するとの事で、弊店には1本も入荷して来ないらしいので残念な思いが致しました。今、人気が出ているロンジン・レジェンドダイバーを購入された方の評価・満足感も高く、あの価格で、すこぶる質感も良く、大好評でしたので、レジェンドマリーナを再度購入したい、という人が増えつつあるのも事実で、その方々へご希望どうり納品出来ないのが、残念です。

このロンジン・レジェンドマリーナは、1938年度の復刻版で、裏蓋をハンター式にして、内側に初期のロンジンのロゴが刻印されている、というロンジンファンにとっては願ってもない、仕上げになっています。ロンジン・レジェンドマリーナは、1938年にイタリア海洋地理研究所とイタリア海軍の海洋調査にロンジン社が腕時計を企画提供したミッション・モデルです。イタリアと、関わりが非常に深い為に、S部長の話によりますと、世界限定500本の内、ほとんど400本以上をイタリアのロンジン事業部に取られてしまったそうです。

世界の各国にあるスウォッチグループ現地法人との、人気腕時計の奪い合いは益々今後、激しくなっていくものと思われ、なかなか人気が出た腕時計は入手出来にくくなっていくのではないか?という懸念があります。

昨年、日本における、スイス時計輸入総金額は、一昨年よりもマイナスに転じたという今までの右肩上がりの輸入増加からは大きく舵が曲がったと言え、今年度もいろんな時計輸入商社の営業マンからの話を統括してみると、再度マイナスに落ち込むのではないか?という話をよく聞きます。

日本では、スイス時計、と言えばR社、O社を代表しますが、両社の腕時計とも、日本では、販売に苦戦している伝え聞いております。他の50万円~100万円以上の高級時計の、売れ行きも日本では苦戦していると昨秋から言われています。

機械式腕時計を愛好する時計ファンの方々の本当の価値を見極める力や、厳しい選択眼が養われて来たために、本来その価値が無いにも関わらず高ければ売れる、という価格設定をした、スイスブランドの高級時計は、かなりの苦境に追いやられていると、言えます。

その一方で、値打ちのある普及品(10万円)や、中級品(10万円~20万円,小生にとっては充分な高級品と言えますが)のスイス腕時計は品薄状態が続いており、お客様から注文を受けても対応出来ない、という苦しいジレンマに立たされています。

特にスイス時計の中で、一番良心的な価格設定をしている、ハミルトン腕時計などはほとんど、どの機種も品切れ状況が続いており、お買い求めのお客様に十分な対応や期待に応じられないのが今の状況です。

中国や、ロシア及びブラジル等の経済成長が著しい国民の間でスイス腕時計の人気が爆発的な広がりになり、丁度10年前の日本の時計市場に機械式腕時計が完全に復活した人気が中国や、ロシア及びブラジル等で、怒濤のように起きているのが事実です。

今後、世界の国の輸入代理店どうしの時計の奪いあいが熾烈を極めていくでしょう。原油高で諸物価が値上がりしていく不況感が漂う今、スイス時計の普及品及び中級品を如何に確保していくかが、時計店にとって死活問題になっていくのではないか?と思われます。