« 続時計の小話・第87話(新作IWCインヂュニアのOH) |
« 続時計の小話・第87話(新作IWCインヂュニアのOH) |
2008年07月27日

●続時計の小話・第88話(平常心と集中力)

7/15、NHK夜の10時の
『プロフェッショナル・ライバルスペシャル~二人の勝負師・光と影の攻防 将棋名人戦 森内俊之VS羽生善治』を大きな関心と興味を持って拝見しました。

プロ将棋界には、7つのビッグタイトルがあります。
『名人』『竜王』『王将』『王位』『棋聖』『棋王』『王座』があります。

天才棋士羽生善治氏は、今まで69回のタイトル保持し、『王将』『王位』『棋聖』『棋王』『王座』では5回以上のタイトルを保持した為に、現役引退後永世王将、永世王位、永世棋聖、永世棋王、永世王座を名乗る事が出来る名誉を既に勝ち得ていました。

名人位と、竜王位のみ、後、1期タイトルを勝ち取るだけで、永世名人、永世竜王を名乗る事が出来る所まで来ておられました。先日、森内俊之名人を4勝2敗で破り、晴れある第19世永世名人位を獲得されました。

羽生善治氏が、彗星の如く将棋界に颯爽と出現して、26才で前人未踏の7大タイトルを全て同時期に獲得した時には、50年に一人あらわれるかどうか?という大天才である、と世間を騒がせる程の活躍でしたし、永世名人位を直ぐに獲得されるのではないか?と思われていました。

この度の対局で、先を越されたライバル森内俊之前名人(第18永世名人)に対して、一矢を報われたものと思います。一流将棋棋士になりますと、対局中、数時間に渡り正座を崩さず読みふけるという、側に寄りがたい雰囲気を醸し出されます。

一手指すのに一時間~二時間、大長考して指される場合色んな局面を想像して、1000手先、2000手先まで読まれるという凡人では計り知れない頭脳を持っておられるのが、一流将棋棋士です。一時間~二時間、読みふけるという事は、大変な集中力の結集と言わざるをえません。羽生善治氏の自書によると、スキンダイビングで海に深く潜っていく感覚と似ている、と言われます。

オメガ腕時計からジャックマイヨール・モデルが出ていますが、素潜りで100mを越す記録をうち立てた彼も、恐らく平常心で、無駄無く酸素を消費する一定の呼吸法を集中して身につけた為に、大記録がうち立てられたものと思います。平常心と集中力が、合い携わっていなければ羽生善治氏の大記録も、ジャックマイヨールの活躍も無かったものと思います。

そう言えば、歌舞伎界の大御所、坂東玉三郎氏も、スキンダイビングでストレスを発散し、平常心と舞台への集中力、体力を養っておられるものと思います。

時計修理も一個のOHを仕上げるのに4~5時間座りっぱなしの状態が続きます。集中力、体力が無ければとても細かい作業の連続なので、耐えられません。小生にも集中力が途絶えて、雑念が入った場合、小さなネジを摘み損ねたり、バネを飛ばしたりする失敗が往々にしてあります。

小さい時から、男兄弟4人で将棋遊びをしてきた為に多少なり今の職業にプラスに影響しているのかもしれません。将棋・囲碁が若い人達の間で一時の勢いが無くなった今、集中力、平常心を養う意味で、小さな、お子達に将棋を教え込むという事は、大事な事なのかもしれませんし、日本の文化継承という、意味合いからも大いなる一手かもしれません。