« 続時計の小話・第82話(またまた嬉しい知らせ ) | | 続時計の小話・第84話(ロンジン腕時計の人気) »
« 続時計の小話・第82話(またまた嬉しい知らせ ) | | 続時計の小話・第84話(ロンジン腕時計の人気) »
2008年04月27日

●続時計の小話・第83話(蒔絵腕時計)

石川県加賀市の山中漆器の蒔絵師・山崎夢舟さんがスイスの独立時計師ピーター・スピーク・マリン氏と組んで共同で、一風変わった特徴のある高級機械式腕時計を製作されています。

昨年のスイスバーゼルフェアで文字板に『鳳凰』をデザインした蒔絵腕時計を出品されました。

その後、『龍』『虎』等のデザインの蒔絵腕時計を、何と1000万円という超高額で販売されているにも関わらず、製作段階の途中で予約が入って既に完売されたそうです。現在は4作目の『唐獅子』を製作されているそうです。

文字板直径3.5cmの中に1mm以下の金粉・銀粉、光沢のある貝殻等を貼り付けるのに双眼顕微鏡を駆使して一枚の文字板を作るのに、大凡3ヶ月という時間がかかる細かい作業の連続だそうです。過度の緊張を強いるために1日の作業時間は2時間が限界だそうです。

地方新聞紙で、その文字板の図柄を見ましたが、龍の絵などは京都・相国寺の天井に描かれている龍(蟠龍図)を、彷彿とさせる様な活き活きとして絵になっていて、中世の美術品が復活したとも言える図柄の蒔絵と現代のスイス時計職人の仕上げたメカ式ムーブメントとが合体した労作と言えます。

唯一無二の腕時計を所有したいというブルジョアの時計蒐集家にとっては、喉から手が出るほど欲しい時計だと思います。

ここ15年のメカ式腕時計の華々しい復活により、個性的な腕時計が大変よく売れていくのに啓発されたかどうかは解りませんが、石川県の地場名産品・九谷焼を文字板に使用した、高級クォーツ腕時計が、加賀九谷・陶磁器共同組合から100個限定で4/10より発売されました。

同組合登録の工芸作家35人が手書きで絵付けされたそうで労力がかかっているために高価にならざるを得ないようです。こちらの方も小売価格は10万~25万円する高価なクォーツ腕時計でしたが、発売当初から注文が殺到して、半分以上は即予約済みになったそうです。

文字板の図柄は花鳥風月や、日本古来の歴史的な模様をアレンジしたものになっていて、こちらも存在力のある力強いクォーツ腕時計に仕上がっています。関心のある方は、石川県九谷焼美術館に問い合わせされてみたら如何かと思います。

また、石川県輪島市は高級な『輪島漆器』で有名な町ですが、ここでは腕時計の『漆文字盤』を製作しておられる漆工棟梁の北村辰夫さんがおられます。消滅した『杣田技法』を復活させて見るも鮮やかな文字板を作ろうとしておられます。

その見事さはスイス・伝統技法クロワゾネを超越するのではないかと期待されています。
それにしても石川県には伝統工芸品に秀でた県と言えるのではないでしょうか。

これも4代藩主前田綱紀が加賀藩に工芸品を奨励したお陰ではないかと思います。それにしてもいろんなアイデアが石川県人に浮かんでくるのも世界中で腕時計が人々の話題にのぼって人気になっているからでしょう。