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2007年01月21日

●第153話(セイコー・シチズン社の動向)

Yさんという方から、最近発売されたグランドセイコー(SBGR025 定価48万円)の注文を受けました。メカ式セイコーGSでは初めての裏シースルーバックで、ケースとバンドがブライトチタンを使用している、非常に魅力のある商品であると、すでに私は時計雑誌から情報を得ていました。弊店でも在庫を1本持とうかなーと思った矢先の注文でした。でも少し仕入れるのに懸念がありました。時計雑誌の紹介では、このGSの取扱店が限定されているような気がしたからです。

注文を受けたので早速、今週の月曜日17日の日にセイコーウォッチ(株)に電話発注しました。やはり、受付の女性社員の方のお話では「このGSは限定商品で、GSショップしか売らない」と言う返事でした。ここで引き下がるわけにはいかないので、セイコーウォッチ(株)幹部のSさんに代わってもらい、何とか注文を受けたので1本融通してもらうわけにはいかないかと、粘り強く交渉しました。しかしSさんの話によると「このGSは年間一千万円以上、GSを販売する店のために商品化した特別のGSである」と言うことでした。

有名百貨店の時計売場から「一般時計小売店が仕入れできない、特別なGSを開発商品化して欲しい」との依頼を受け、製品化したGSなので、イソザキさんのような一般の小売時計店には卸さないという話でした。

人口7万の松任市で、メカ式GSを年間10本前後売る当店は、それなりに販売営業努力をして、売ってきたつもりなのです。人口100万以上の大都市の大型時計店では、年間50本以上GSを売る店もあるかもしれませんが、もともと上がった土俵(都市の規模)が最初から違うのです。そういう事を分かってもらえず、非常に残念な思いをしました。

メカ式GSは35万円以上するので、時計店店主がメカ式GSに惚れ込まないと、なかなか売れる時計ではありません。なぜなら、その価格帯にはスイス高級時計の魅力のあるブランドが一杯あるからなのです。そういう店のメカ式GSに対する店主の意気込みをセイコーウォッチ(株)の幹部社員の人達が理解してくれなくて、大変悔しい思いをしました。

時計小売店を営業してきて、お客様が欲しいと言う時計を入手できない時ほど、辛い思いはありません(スイス高級腕時計の代理店制度の場合、日本輸入元と契約していなければ仕入れできないのはやむ得ないのですが、セイコー、シチズンは全国のどこの小さな時計店でも仕入れできるのが当り前だからです)。ほとんどのメカ式GSが入手できるのに、その1機種のみが入手できずにお客様に売れないと言う事は、店にとっての信用問題にも関わる大きな問題であることを、セイコーウォッチ(株)に理解して頂きたいと思います。

このやり方は、例えて言えば時計小売店が、ある人にはGSを売り、またある人にはGSを売らないという、店の勝手で差別しているようなものだと私は思います。セイコー社は長年業績が悪く、苦労しているのに、このようなやり方で業績を回復するのは、大変難しいのではないかと思った次第です(創業者、服部金太郎翁が生きていたら、このことに対してどう思われるのか聞いてみたいものです。必ずや今のセイコー社の幹部を叱責されるに違いありません)。

北陸3県でこのグランドセイコー(SBGR025 定価48万円)を売れる店は、石川県K市の一店舗だけです。例えば福井、富山県の人がこのGSを買いたいと思っても、わざわざ石川県K市まで来ないと買えない訳です。そのことをセイコーの幹部の人達は
解っているのでしょうか?

ユーザーの方の購買意識はどんなものなのか、わかりませんが、おそらく、購入したい時計の魅力+何%かは懇意・信用している時計店で買いたいというものではないでしょうか。残念ながらシチズンでも最近同じような事がありました(カンパノラの場合でした)。